母子保健学教室

 

A. 研究課題の概要

 

1. 乳児栄養に関する研究   

1) 離乳期の鉄栄養について

 沖縄県中城村において離乳後期の乳児43人を対象として栄養調査を行い, 鉄摂取状況を調査した。母乳栄養児は, 母乳の分泌不足をみつけにくく, 乳汁から摂取している鉄の量が少ない傾向がみられた。人工栄養児は2回食から3回食へ進める時期が遅く, 鉄の大部分は育児用ミルクあるいはフォローアップ・ミルクから摂取していた。離乳後期の栄養指導では, 母乳栄養児は母乳不足に対する注意が必要であり, 人工栄養児は, 離乳の進め方が遅れないように配慮する必要があると考えられる。

2) 離乳とベビーフードについて

 近年, ベビーフードの使用率が急速に増加しており, 改訂「離乳の基本」にも「離乳食の進行状況に応じた適切なベビーフードを使用することもできる」と記載されている。

平成9年度は, ベビーフードの使用状況を中城村の乳児202人 (3〜11か月) を対象として調査した。ベビーフードは60.9%の母親が使用しており, 月齢別にみると5-6か月児で最も多く利用しており, その割合は74.1%であった。使用状況は, 厚生省の全国調査 (平成7年度) とほぼ同じ成績であった。しかし当教室の前回の調査によると, ベビーフード使用率は26.7%であり, この17年間に著しく増加していた。

3) 母乳栄養児の咽頭常在菌について

 昨年度は, 母乳栄養児の咽頭常在菌の特徴として, グラム陰性菌検出率の少ないことを報告した。今年度はさらに検体を増やし, 常在菌と病原菌のそれぞれについての出現率を検討した。乳児125人を対象として栄養法別に母乳, 混合, 人工の3群に分類し, 咽頭より分離された常在菌と病原菌について比較検討した。母乳栄養児の咽頭常在菌の特徴をまとめると, ・Coagulase Negative Staphylococciの検出率が高い, ・グラム陰性菌の検出率が低い, ・Haemophilus influenzae, Molaxella catarrharis等の病原菌の検出率が低いことであった。検出された常在菌, 病原菌の間の関連性についても検討をすすめている。

 

2. ピアエデュケーションに関する研究   

 沖縄県内のN高等学校の2年生, 男子148人, 女子194人を対象として, 性に関する意識・知識について男女差を明らかにするために, 夏休みの前後に質問紙法による調査を行った。

 その結果, 性という言葉に対する印象は, 男女共に「とても大切なこと」が最も多く, 性に関して知りたいことは, 男女共に「異性の心」が多かった。性に関する情報源・相談相手は, 男女共に約7割が同級生であり, 同世代・同年代の仲間 (ピア) 同士で影響しあうこの時期の特徴が現われていた。性に対する寛容さについては, 男子が女子に比べ, より寛容な回答が多く, 性に対する責任性については, 男女で回答に違いはみられなかった。男女交際の限度について「性交する」が男子では49%と最も多く, 女子では「キスをする」, 「性交する」がそれぞれ37%, 34%の順になっていた。また, 望まない妊娠を避けるにはどうすればよいかという質問に対し, 男女共に「もっと具体的な避妊の方法を知る」が最も多かった。

 この調査の後に, 性をより主体的にとらえられるような動機付けと, 正しい性の知識の伝達を目的として, N高等学校の2年生, 1クラスを対象に性教育を行った。この性教育の一方法としてロールプレイ等を取り入れ, 8人の大学生によるピアエデュケーションを3回行った。ロールプレイでは, 高校生の身近な行事の中での男女交際の様子について大学生が演じ, 3つのグループに別れ, 自分だったらどうするかなど話し合った。また実際に避妊具に触れる機会を設け, 人工妊娠中絶や性行為感染症については模型やパンフレットを用いて説明を行った。

 ピアエデュケーション実施後に高校生から「性についてよく考えることができた」, 「大学生は年齢も近く, 話や質問がしやすい。安心できた」等の感想が聞かれた。また, ピアエデュケーション実施前後の調査を比較すると, 性の責任性について, 男子では実施後の方が責任性の得点が高い傾向がみられた。さらに, 望まない妊娠を避けるにはという質問に対し, 男女共に「もっと具体的な避妊の方法を知る」だけでなく, 「男女が性について本音で話し合える」が増加していた。これらのことより, ピアエデュケーションは, 生徒が性をより主体的にとらえられるよう働きかけていく一手法として効果があることが示唆された。さらにピアエデュケーションの実施回数を重ねることにより, 仲間から仲間への輪が広がっていくことが期待される。

 

 

B. 研究業績

 

1. 原著

G97001: 外間登美子, 谷口希代子, 竹中静廣 (1997) 母親の疲労に関する調査成績 -産後1か月から3か月までのアンケート調査より-. 母性衛生38 179-181.

 

2. 総説

S97001: Hokama T, Yara A (1997) Vaccination practice for perinatal hepatitis B virus infection. Ryukyu Med J 17 127-129.

 

S97002: 外間登美子 (1997) 1か月児の健康診査と育児相談. 母子保健 463 8-9.

 

4. 報告

H97001: 安里葉子, 外間登美子, 与儀智枝美, 塩川明子, 荷川取次枝, 砂川和代 (1997) 中城村における離乳期の栄養調査成績. 沖縄の小児保健 24 26-29.

 

H97002: 外間登美子, 安里葉子, 仲里幸子 (1997) 乳児の鉄栄養に関する研究(第2報) -離乳後期の栄養調査成績-. 小児保健研究 56 248-249.

 

H97003: HokamaT, Yara A, Hirayama K, Itokazu K, Uema N, Kinjho R, Yabu E, Toma F (1997) A survey on the vaccination practice for perinatal hepatitis B virus infection at a clinic in Okinawa. Public Health in Asia (Proceeding 26).

 

5. その他

M97001: 内田みゆき, 堀真美, 友利千賀子, 山口朝子, 竹中静廣 (1997) 高校生の性教育におけるピア・エデュケーションを試みて -性意識の変化-. 卒業研究小論文集 24 161-164.

 

M97002: 友利千賀子, 堀真美, 内田みゆき, 山口朝子, 竹中静廣 (1997) 高校生の性教育におけるピア・エデュケーションを試みて -展開方法とその評価-. 卒業研究小論文集 24 165-168.

 

M97003: 堀内真由美, 永木真希子, 外間登美子, 竹中静廣 (1997) 中城村における離乳期の栄養調査成績. 卒業研究小論文集 24 169-172.

 

M97004: 坂元良子, 山城佳, 外間登美子, 竹中静廣 (1997) 乳児の栄養法による咽頭細菌の比較 -第2報-. 卒業研究小論文集 24 173-176.

 

M97005: 枦山幸恵, 平山清武, 竹中静廣 (1997) 思春期の不定愁訴に関する研究 -起立性調節障害のスクリーニングの試み-. 琉球大学大学院保健学研究科修士論文.

 

M97006: 林田リカ, 外間登美子, 竹中静廣 (1997) 新生児の鉄レベルに関する研究 -母子のHb・MCV・血清鉄・TIBC・血清Ferritin値について-. 琉球大学大学院保健学研究科修士論文.

 

M97007: 谷口希代子, 竹中静廣 (1997) 沖縄県における過去10年間の子宮頚癌集団検診の成績. 琉球大学大学院保健学研究科修士論文.

 

M97008: Hokama T, Yamamoto S, Shinjho S (1997) A study of iron requirement during weaning by total body weight . J Trop Pediatr 42 120.