成人保健学第二教室

 

A. 研究課題の概要

 

1. エストロゲンの抗高脂血症作用に関する研究

 エストロゲンの代謝産物である estradiol-17??(E2-17) と 2-methoxyestrol (2-MeOE3) を去勢雌ラット (ウイスター系) に投与し, 血中総コレステロールを測定するとともに, 子宮と肝臓を形態学的に観察した。その結果, 2-MeOE3と E2-17??は, いずれも同程度の血中総コレステロール低下作用があり, 肝臓における脂肪沈着を有意に抑制していた。また, 子宮に対する作用については, E2-17??は 2-MeOE3 に比べ, 子宮内膜の増殖作用が強く, 子宮内膜症や子宮癌を発生させる恐れがあることが示唆された。同様に遺伝性糖尿病ラットにおいても, 両ホルモンを投与し, 脂質代謝, 肝機能への影響を検討した。その結果, E2-17??及び 2-MeOE3 は糖尿病ラットにおいても抗高脂血症作用があるが肝機能障害に対しては, E2-17??には促進作用, 2-MeOE3には抑制作用があった。以上のことから, 向性器作用がなく肝機能障害にも抑制的に働く, 2-MeOE3 は今後, 高脂血症治療薬としての開発が期待できることを明らかにした。

 

2. 住民の肥満状況及び脂質代謝状態に関する研究

 我々は中高年女性の血中脂質及び肝機能の状態について内蔵における脂肪沈着という視点から検討を行った。その結果, 脂肪肝ありの者はなしの者に比べ, トリグリセライド, GOT, GPT, 空腹時血糖, 体脂肪率が有意に高く, HDL-コレステロール, TeBG (性ホルモン結合グロブリン) が有意に低い値を示していた。なかでも, TeBGは体脂肪, HDL-コレステロール, 空腹時血糖, トリグリセライドとも有意に相関性があることから, 血中に存在する量は極めて少ないが, 肥満や脂肪肝に伴う糖・脂質代謝の異常をより反映することが示唆され, 臨床の場においてTeBGを測定することは有用であることを報告した。

 

3. 皮膚表面温度から見た自律神経状態に関する研究

 従来我々は, サーモグラフィによる皮膚表面温度, 特に指尖部温を指標とした寒冷負荷試験及び温熱負荷試験で, 自律神経機能の状態をよく反映することを明らかにしてきた。今年度は持続温熱負荷試験による自律神経機能診断への応用を試みた。その結果, 当教室が報告した反応型(T〜W型)に基づいて分類し, U及びW型においては従来10分かかるところ3分での診断が可能であることが推察された。

 

4. 周産期及び中高年期における骨密度状態と生活行動に関する研究

 二次性骨粗鬆症発症に対する予防・予知のために, 妊娠期から授乳期にかけて横断・縦断的に骨密度を測定し, 生理代謝的変化や生活状態等の影響要因・関連因子を明確にしようとしている。

 昨年までに産後経過による骨量は, 産後1週間で最低値を示し, 18〜20ヶ月で最高値を示すことが分った。影響要因として体格 (痩せ), 授乳法 (母乳), 断乳の時期 (1年), 年齢 (35歳以上) 等が分った。

 

 

B. 研究業績

 

1. 原著

G97001: 宮城万里子, 小西清美, 友利千賀子, 当間典子, 河野伸造 (1997) 入院患児1事例における自律神経状態. Biomed Thermol 17 23.

 

G97002: 石田登喜子, 大川洋子, 飯田真子, 宮城万里子, 砂川信, 河野伸造 (1997) 腹部持続温熱負荷による自律神経機能診断の試み. Biomed Thermol 17 25.

 

G97003: 大川洋子, 石田登喜子, 飯田真子, 宮城万里子, 河野伸造 (1997) 早期新生児期における成熟児の皮膚表面温度の特性. Biomed Thermol 17 21.

 

2. 総説

S97001: 河野伸造, 宮城万里子 (1997) 科目履修制度という方法:琉球大学医学部保健学科における科目履修制度. Quality Nursing 3 701-704.

 

4. 報告

H97001: Miyagi M, Watanabe E, Kinjo R, Konishi K, Tomori C, Nishida K, Kono S (1997) Factors in the postpartum effecting on health of bone system. International Symposium: Health Related QOL and Health Care Assessment. The Internathional Society for Quality of Life Reserch.

 

H97002: Okawa Y, Kinjo R, Watanabe E, Ishida T, Miyagi M, Harrison EK, Miyazato K, Teruya N, Kono S (1997) Change of postmenopausal bone density and model experiment for its prevention with soy protein. International Symposium: Health Related QOL and Health Care Assessment. The Internathional Society for Quality of Life Reserch.

 

H97003: Nisida K, Watanabe E, Kinjo R, Sinjo M, Kono S. (1997) A study on contributing factors for retention of teeth among the elderly. International Symposium: Health Related QOL and Health Care Assessment. The International Society for Quality of Life Research.

 

H97004: 飯田真子, 大川洋子, 石田登喜子, 金城利香 (1997) 成熟女性における骨密度と生活習慣の関連. 第38回日本母性衛生学会学術集会抄録集 151.

 

H97005: 宮城万里子, 渡辺恵美子, 石田登喜子, 大川洋子, 飯田真子, 河野伸造 (1997) 授乳期における骨密度の縦断的推移について. 第38回日本母性衛生学会学術集会抄録集 302.

 

H97006: 渡辺恵美子, 宮城万里子, 金城利香, 西田和子, 飯田真子, 河野伸造 (1997) 産後に骨密度の低下を来した症例の縦断的検討. 第38回日本母性衛生学会学術集会抄録集 296.

 

H97007: 石田登喜子, 大川洋子, 宮里和子, 河野伸造 (1997) 持続温熱負荷試験による更年期女性の自律神経状態. 日本更年期医学会雑誌第12回学術集会 プログラム・要旨集 66.

 

H97008: 石田登喜子, 大川洋子, 宮里和子, 河野伸造 (1997) 更年期女性の不定愁訴, "Hot flush"ならびにその誘発試験からみた自律神経機能状態. 第29回沖縄県公衆衛生学会発表抄録集 30.

 

H97009: 飯田真子, 大川洋子, 石田登喜子, 金城利香, 渡辺恵美子, 宮城万里子, 河野伸造 (1997) 成熟女性における骨密度と生活習慣との関連. 第29回沖縄県公衆衛生学会発表抄録集 32.

 

H97010: 宮里和子, 飯田真子, 大川洋子, 石田登喜子, 河野伸造 (1997) ダウン症候群者の長期予後 -アンケート調査, 血清生化学検査などから-. 第29回沖縄県公衆衛生学会発表抄録集 42.

 

H97011: 友利千賀子, 宮城万里子, 金城利香, 西田和子, 飯田真子, 河野伸造 (1997) 産褥骨粗鬆症2症例の回復状況. 第29回沖縄県公衆衛生学会発表抄録集 28.

 

5. その他

M97001: 河野伸造 (1997) ターナー症候群と女性ホルモン補充療法. 講演, ターナー症候群の会 中部地区医師会 成人病検診センター.

 

M97002: 鈴木あかね, 宮城智美 (1997) 妊娠期の骨密度変化とそれに及ぼす要因(1) -年齢, BMI, 既往妊娠分娩歴, その他-. 平成9年度琉球大学医学部保健学科卒業論文集 77-80.

 

M97003: 宮城智美, 鈴木あかね (1997) 妊娠期の骨密度変化とそれに及ぼす要因(2) -食生活について-. 平成9年度琉球大学医学部保健学科卒業論文集 81-84.

 

M97004: 山本五月, 松本みどり (1997) 持続温熱負荷試験による手示指尖部皮膚表面温度の変化 -自律神経機能診断への応用-. 平成9年度琉球大学医学部保健学科卒業論文集 85-88.

 

M97005: 松本みどり, 山本五月 (1997) 持続温熱負荷試験による顔面鼻尖部皮膚表面温度の変化 -自律神経機能診断への応用-. 平成9年度琉球大学医学部保健学科卒業論文集 89-92.