臨床検査医学講座

 

A. 研究課題の概要

 

1. 抗酸菌迅速培養法の開発 (山根誠久)

 米国疾病管理予防センター (CDC) の勧告を満足できる迅速な抗酸菌培養技術を開発している。従来, わが国では全卵を主成分とする小川培地のみが臨床検査に使用されてきたが, これに代る液体broth培地を開発し, 菌発育のインディケータを併用することで, 培養2週間で最終判定できる培養技術の開発を試みている。

 

2. 定量的な抗酸菌薬剤感受性試験の開発 (山根誠久)

 小川培地に代る液体broth培地での迅速な菌発育が可能となり, 現在この培養法を定量的な薬剤感受性試験に応用すべく研究開発に着手した。培養1週間で, 一般細菌と同様, 最小発育阻止濃度 (MIC) の定量が可能であり, 複数施設での成績互換性と耐性遺伝子との相関を解析している。

 

3. 沖縄県における長寿要因の解析 (玉元, 戸田)

 大宜味村の40〜74才を対象に血清Lp(a)値を測定した。Lp(a)は加齢とともに若干増加傾向がみられたが, 他府県とほぼ同様の値であった。男性は他府県と同様のL字型, 女性は宮古地区により近い分布であった。

 

4. 子宮頚部重層扁平上皮癌の放射線治療による細胞死の電顕的及び免疫組織学的検討(戸田)

 StageVbの子宮頚部重層扁平上皮癌を反復照射した前後の標本を用いてTNF-α, TNFレセプター, Fas, c-fos, p53, bcl-2の免疫染色を施行した。放射線治療により, 核クロマチンの均一化, 核小体の消失, 細胞内小器官の空胞化が認められた。またTNF-αは全例陽性で, TNF-レセプター, Fas, c-fos, p53も種々の割合で陽性となった。

 

5. 顕微蛍光測光法及びPCR-SSCP法を用いた子宮平滑筋腫瘍のDNA解析 (戸田, 玉元)

 顕微蛍光測光法, PCR-SSCP法を用いて子宮平滑筋腫瘍のDNA解析を行なった。 平滑筋腫はすべてdiploidyを示し, 平滑筋肉腫はpolyploidy, aneuploidyを示した。また平滑筋腫ではmicrosatellite領域に変化はなく, 平滑筋肉腫ではLOHが多数認められた。

 

6. 院内感染 (草野展周)

 琉球大学附属病院におけるMRSAからの分離状況, 薬剤感受性の変化を調査し, 報告している。また, 院内感染対策として病棟における汚染状況や保菌状況, 消毒法の検討も行っている。

 

7. 細菌の薬剤耐性とその疫学 (草野展周)

 肺炎球菌のニューキノロンに対する耐性機序の遺伝子解析から高度耐性菌ではgyrAだけでなく, parC遺伝子にも複数部位の変異が認められた。またphenotypeが感性の株であっても既にどちらかの遺伝子に変異が認められた株が多数分離されていることを報告した。さらに, インフルエンザ桿菌についてもβ-lactamase非産生ABPC耐性株に注目し, その疫学及び耐性機序について検討中である。

 

8. 口腔内常在菌の呼吸器感染症における重要性の検討 (草野展周)

 Streptococcus milleri groupの病原因子および嫌気性菌との相乗作用について, ヒト炎症細胞への直接的影響やマウス肺炎モデルにおける感染実験で検討を行ってきたが, 一部の株が産生するムコイド様物質に注目し, その物質がヒト好中球機能を直接的に抑制することを報告した。

 

 

B. 研究業績

 

1. 原著

G97001: Oku H, Toda T, Nagata J, Ishika M, Neyazaki K, Shinjyo C, Chinen I (1997) Apolipoprotein A-1 of Japanese quail: cDNA sequence and modulation of tissue expression by cholesterol feeding. Biosci Biotech Biochem 61 286-290.

 

G97002: Nagata J, Maeda G, Oku H, Toda T, Chinen I (1997) Lipoprotein and apoprotein profiles of hyperlipidemic atherosclerosis-prone Japanese quail. J Nutr Sci Vitaminol 43 47-57.

 

G97003: Koide M, Miyara T, Higa F, Kusano N, Tateyama M, Kawakami K, Saito A (1997) In vitro and vivo evaluation of the antimicrobial against Legionella species activity of azithromycin. Infect Chemother 90-96.

 

G97004: 山根誠久, 猪狩淳 (1997) 酵母真菌を対象とするColorimetric Broth Microdilution法での抗真菌剤薬剤感受性試験の検討 -国内17施設での共同評価. 臨床病理 45 190-199.

 

G97005: 山根誠久, 宮川静代, 仲宗根勇, 坂本福美, 戸坂雅一 (1997) バイコマイシン耐性腸球菌検出のための各種薬剤感受性試験の検討. 臨床病理 45 381-390.

G97006: 山根誠久, Behiry IK, 戸坂雅一, 仲宗根勇 (1997) Amphotericin Bと各種抗菌剤の組み合わせで観察される抗真菌活性のin vitro相乗作用の検討. 臨床病理 45 689-695.

G97007: 百次仁, 六川次郎, 山城勝美, 石川泰成, 奥山久仁男, 戸田隆義 (1997) 後頭蓋窩硬膜動静脈奇形の組織学的検討. 脳神外科 25 137-142.

 

G97008: 富田秀司, 宮里浩, 玉井修, 武藤良弘, 戸田隆義 (1997) 消化管癌におけるmicrosatellite instabilityとtransforming growth factor-βU型受容体遺伝子変異の検索. 消化器癌の発生と進展. 消癌発生 9 135-138.

 

G97009: 當山真人, 新里敬, 金森修三, 宮城啓, 田場秀樹, 豊田和正, 草野展周, 斎藤厚 (1997) 嫌気性菌代謝産物の好中球機能に及ぼす影響 (第2報). 嫌気性菌感染症研 26 21-26.

 

G97010: 比嘉太, 草野展周, 斎藤厚 (1997) ペニシリン耐性肺炎球菌による肺炎の治療. 呼吸 16 1510-1517.

 

G97011: 長嶺辰美, 崎山健伸, 浦崎裕子, 饒平名光三, 山根誠久 (1997) クレアチニン測定用試薬, ランピアリキッドCREA(極東製薬工業)の基礎的検討. 機器・試薬 20 431-438.

 

2. 総説

S97001: 山根誠久 (1997) 検査微生物学 (T) -細菌, 真菌, クラミジア, リケッチア感染症の検査診断-. 1. 部位別検査法と診断的意義. A. 菌血症, 敗血症, 細菌性心内膜炎. 臨床病理 臨時増刊特集 105 65-69.

 

S97002: 草野展周, 山根誠久 (1997) 検査微生物学 (T) -細菌, 真菌, クラミジア, リケッチア感染症の検査診断-. 2. 特定菌種の検査法. A. 結核菌および非定型抗酸菌. 臨床病理 臨時増刊特集 105 120-124.

 

S97003: 山根誠久 (1997) ドライケミストリー・簡易検査の新たなる展開. 7. 臨床微生物. b. 臨床微生物部門の主な簡易検査機器と試薬. 臨床病理 臨時増刊特集 106 121-129.

 

S97004: 山根誠久 (1997) 抗酸菌検査の品質管理. 日本臨床微生物学雑誌 7 60-65.

 

S97005: 山根誠久 (1997) 不活化インフルエンザワクチンの現状, 問題点と新しいワクチン開発研究の動向. 日本臨床 55 2732-2737.

 

S97006: 山根誠久 (1997) 結核菌の迅速培養法. 医学のあゆみ 181 736.

S97007: 仲宗根勇 (1997) 感染症診断における免疫学的診断法の現状. ル・デパール 5 1-16.

 

S97008: 山根誠久 (1997) なぜ微生物緊急検査が必要か. Biomed News 28 4-6.

 

S97009: 草野展周(1997)血清型別が要求される細菌の同定検査シリーズ. 5. レジオネラ菌と判定するための必要十分条件. Med Technol 25 721-725.

 

S97010: 山根誠久 (1997) 自動化機器による薬剤感受性試験. Lab Clin Pract 15 71-73.

 

3. 著書

T97001: 草野展周 (1997) ブドウ球菌感染症. 高久史麿, 尾形悦郎, 編「新臨床内科学 第7版」, 医学書院, 東京, 1465-1468.

 

T97002: 草野展周 (1997) レプトスピラ症 (ワイル症候群等) . 日野原重明, 阿部正和, 編「今日の治療指針」, 医学書院, 東京, 171.

 

T97003: 草野展周 (1997) 黄色痰と発熱で来院した53歳男性. 山口惠三,編「専門医を目指すCASE METHOD APPROACH12感染症」, 日本医事新報, 東京, 41-46.

 

T97004: 草野展周 (1997) 発熱と強い咳嗽で来院した29歳女性. 山口惠三, 編「専門医を目指すCASE METHOD APPROACH12感染症」, 日本医事新報, 東京, 67-72.

 

T97005: 草野展周 (1997) 病原体の種類と臨床症状. 琉球大学, 編「感染症: 最近の動向」, 琉球大学, 西原, 7-13.

 

4. 報告

H97001: 斎藤厚, 稲松孝思, 岡田淳, 小栗豊子, 菅野治重, 草野展周, 公文裕巳, 山口惠三, 渡辺彰, 他1名 (1997) 日本化学療法学会抗菌薬感受性測定法検討委員会報告 -呼吸器感染症および敗血症におけるブレイクポイント. 新規抗菌薬および既存抗菌薬の追加 (1997)(案)-. 日化療会誌45 757-761.

 

H90002: 斎藤厚, 三木文雄, 大泉耕太郎, 力富直人, 渡辺彰, 古賀宏延, 二木芳人, 草野展周 (1997) 日本化学療法学会抗菌薬臨床評価法制定委員会 呼吸器系委員会報告 -呼吸器感染症における新規抗微生物薬の臨床評価法(案)-. 日化療会誌 45 762-778.

 

5. その他    

M97001: 山根誠久 (1997) 沖縄からのメッセージ. 検査と技術 25 512.

 

M97002: 山根誠久 (1997) Empiric therapy とPrecise therapy. 化学療法の領域 13 869.

 

M97003: 山根誠久 (1997) バンコマイシン耐性腸球菌 (VRE). Med Technol 25 98-99.

M97004: 中田宗朝, 六川二郎, 金城利彦, 山城勝美, 豊見山直樹, 根路銘国政 (1997) 手術支援システム“サット”を応用した側頭葉てんかんの手術手技の開発. てんかん治療振興財団研究年報 176-181.