法医学講座

 

A. 研究課題の概要

 

1. 死後体内薬物の再分布 (宮崎哲次, 福家千昭, 荒尾友則)

 剖検時に採取した血液中の薬物濃度は必ずしも死亡時の濃度を反映していないことが知られている。種々の薬物について, 死後早期に時間経過に伴い血中濃度が著明に増加することが明らかとなってきた。覚醒剤乱用者の剖検例において, 覚醒剤の血中濃度が採取部位により大きく異なることを報告したが, 生前に一定の平衡を保ちながら全身に分布していた薬物が, 死後に再分布することによるものであると考えられる。今後このような薬物濃度の死後変化がどのように生じていくのかについて今後検討を加えて行きたい。

 

2. 薬毒物の定量分析法の開発とその応用 (福家千昭, 荒尾友則)

 生体試料中の薬毒物を定量的に分析することは, 中毒死例における死因の解明や中毒患者に対する治療方針の決定などに関して必要不可欠なものである。これまで, 生体試料中の薬毒物やその代謝産物の簡易で迅速な定量分析法を開発し, 実際例に応用するとともに, それらの体内動態や体内分布について動物実験にて検討を行なってきた。今後これらのことを継続し, データの蓄積を行うとともに動物実験の結果を実際例に応用することを検討して行きたい。

 

3. DNA多型を利用した個人識別 (玉城尚)

 染色体上に散在するマイクロサテライトDNAと呼ばれる領域のうちのいくつかをPCR法で増幅し, DNAシークエンサーを用いて, 検出されるピークのサイズにより個々の遺伝子型を決定し個人識別を行なう。これは, 従来の方法と比べごく少量で, あるいは高度に腐敗・陳旧化した試料であっても鑑定を行うことが可能である。この方法を導入することにより, 以前は鑑定に不適当であった検体を用いても鑑定を行うことができるようになった。さらに, ミトコンドリアDNA内d-Loop部分の超可変領域のシークエンシングを行ない, 個人識別その他鑑定に応用することを検討している。

 

 

B. 研究業績

 

1. 原著

G97001: Kinoshita H, Ijiri I, Ameno S, Fuke C, Tanaka N, Kubota T, Tsujinaka M, Ameno K (1997) Forced double suicide by fire revealed by sutopsy and toxicological examination: A case report. Jpn J Legal Med 51 457-461.

 

4. 報告

H97001: 福家千昭, 玉城尚, 森永泰正, 宮崎哲次 (1997) フェノバルビタール中毒死の1例 -体内分布について-. 日法医誌 51 53.

 

H97002: 向井敏二, 玉城尚, 加納節夫, 原修一, 佐藤喜宣, 大野曜吉, 宮崎哲次, 永盛肇, 遠藤任彦, 他3名 (1997) 乳児急死と睡眠時環境. 日法医誌 51 93.

 

H97003: 岩崎泰昌, 権守邦夫, 宮崎哲次, 屋敷幹雄, 奈女良昭, 岡田加奈子, 小嶋亨 (1997) ドクツルタケによるキノコ中毒の一剖検例. 日法医誌 51 158.

 

H97004: 宮崎哲次, 玉城尚, 福家千昭, 上原学, 内間栄行 (1997) 電気マッサージ器による絞死事例. 日法医誌 51 159.

 

H97005: 玉城尚, 宮崎哲次, 福家千昭, 高江洲一, 比嘉薫 (1997) 起因不明であった車内一酸化炭素中毒死事例. 日法医誌 51 178.

 

H97006: 森永泰正, 福家千昭, 玉城尚, 宮崎哲次 (1997) クレゾールの体内動態について. 日法医誌 51 182.

 

H97007: 福家千昭, 酒井好幸, 八木田一雄, 森永泰正, 玉城尚, 宮崎哲次 (1997) 経皮吸収によるクレゾール中毒におけるクレゾール分析例. 中毒研究 10 206.

 

5. その他

M97001: Ito A, Iwamasa T, Tamaki N, Fuke C, Miyazaki T, Nagamori H (1997) An autopsy case of sudden adult death by viral myocarditis. ADVANCES IN LEGAL MEDICINE 3 377-379.