寄生虫学講座

 

A. 研究課題の概要

 

1. 糞線虫症に関する研究

 1993年から1997年の5年間に亘って実施してきた,久米島をフィールドとした糞線虫症の集団対策では,延べ7千人近い住民が糞便検査を受けた。その中で,約350人もの糞線虫感染者が見出され,2百人余りが治療を受けることとなった。当初10%近くあった感染率は,この5年間に徐々に低下し2%台となったが,いくつかの問題点が浮き彫りになった。すなわち,久米島における集団検査では受検者の半数近くが毎年入れ替わる傾向にあることや比較的多数のfalse-negative例,治療不成功例がみられることが明らかになり,その対策には数年に亘って集団検査,治療対策を続けることが必要と考えられた。これを受けて,南大東島でも同様な集団対策を開始し,初年度の感染率は5.8%,推定感染率4.8%という結果が得られた。科学研究費との関連では,感染者のHLAタイプと病態,免疫応答能との関係について解析を進め,得られた成果を学会報告した。犬に自然感染が認められる糞線虫のヒト糞線虫との異同について,遺伝子レベルでの解析を引き続き進めている。また,これまでの糞線虫症の研究成果を「日本における糞線虫と糞線虫症」の出版という形で発表した。

 

2. 国際医療協力における研究

 ラオス国公衆衛生プロジェクトにおいて,マラリアモデル村をカモワン県内に設置し,その調査研究を進めている。また,マラリアを媒介する蚊の種類を特定する目的で,同県において媒介蚊の分布調査が実施された。

 

3. 沖縄における百歳老人の免疫機能に関する研究

百歳を超える超高齢者を対象に,末梢血細胞の免疫学的解析を行った。その結果,超高齢者ではmiddle-age群に比べ顆粒球の増加が認められた。また,超高齢者では胸腺外分化T細胞であるCD3+CD57+T細胞が増加することを報告した。

 

4. 人体寄生虫の症例研究

アフリカからの研修生より沖縄県初例,全国的にも稀なロア糸状虫を検出し,学会において報告した。また,沖縄県内外から依頼のあった受託検査の中には,熱帯熱マラリア2例,三日熱マラリア,小形アメーバ症2例,タイ肝吸虫症,マンソン孤虫症,日本海裂頭条虫症2例,蛔虫症2例等の寄生虫感染症が認められた。

 

 

B. 研究業績

 

1. 原著

G97001: Kobayashi J, Nambanya S, Miyagi I, Vannachone B, Manivong K, Koubouchan T, Amano H, Nozaki H, Inthakone S, et al (1997) Collection of anopheline mosquitos in Khammouane, Lao PDR. Southeast Asian J Trop Med Public Health 28 616-620.

 

G97002: Miyaji C, Watanabe H, Minagawa M, Toma H, Kawamura T, Nohara Y, Nozaki H, Sato Y, Abo T (1997) Numerical and functional characteristics of lymphocyte subsets in centenarians. J Clin Immunol 17 420-429.

 

G97003: Abo T, Fukuda M, Honda S, Sato Y, Toma H, Suzuki S, Sekikawa H (1997) Enviromental factors affecting the life span of men and women. Biomed Res 18 265-271.

 

G97004: 屋良さとみ, 伊志嶺朝彦, 平田哲生, 新垣紀子, 仲本敦, 宮良高維, 座波修, 我謝道弘, 外間昭, 他8名(1997) 当科で経験した輸入寄生虫症例の検討. Clin Parasitol 8 30-32.

 

3. 著書

T97005: 城間祥行, 佐藤良也編著(1997) 日本における糞線虫と糞線虫症, 九州大学出版会, 福岡市, 191pp.

 

T97006: 長谷川英男(1997)第1章 分類・形態・生活史. 城間祥行, 佐藤良也編著, 日本における糞線虫と糞線虫症, 九州大学出版会, 福岡市, 5-27.

 

T97007: 佐藤良也, 小林潤, 城間祥行(1997)第5章 診断. 城間祥行, 佐藤良也編著, 日本における糞線虫と糞線虫症, 九州大学出版会, 福岡市, 97-124.

 

T97008: 佐藤良也, 高良政弘, 當眞弘(1997)第8章 疫学・予防. 城間祥行, 佐藤良也編著, 日本における糞線虫と糞線虫症, 九州大学出版会, 福岡市, 169-191.

 

4. 報告

H97009: 小林潤, Nambanya S, 佐藤良也, 宮城一郎, 新城正紀, Vannachone B, Xeuatobongsa A, Manivong K, Inthakone S, 他2名 (1997) ラオス国カモアン県におけるマラリアモデル村の作成. 日熱帯医会誌 25 108.

 

H97010: Satoh M, Toma H, Sato Y, Shiroma Y, Kiyuna S, Takara M, Kikuchi M, Hirayama K (1997) The relationship between Strongyloides infection and human leukocyte angigen(HLA). The 66th Annual Meeting of the Japanese Society of Parasitology, Chiba City, Parasitol Intern 46 Supp 64.

 

H97011: Toma H, Shimabukuro I, Sato Y, Tasaki T, Takara M, Kobayashi J, Nozaki H (1997) Mass control surveys on Strongyloides infection in an island of Okinawa, Japan. The 66th Annual Meeting of the Japanese Society of Parasitology, Chiba City, Parasitol Intern 46 Supp 108.

 

H97012: 屋良さとみ, 伊志嶺朝彦, 平田哲生, 新垣紀子, 仲本敦, 宮良高維, 座波修, 我謝道弘, 外間昭, 他8名 (1997) 当科で経験した輸入寄生虫症例の検討. 第8回臨床寄生虫研究会プログラム.

 

H97013: 屋良さとみ, 比嘉太, 岸本邦弘, 新垣紀子, 伊志嶺朝彦, 健山正男, 草野展周, 斎藤厚, 當眞弘, 他1名 (1997) ロア糸状虫症の1症例. 感染症誌 71 180.

 

H97014: 新城正紀, 有泉誠, 小林潤, X アノン, S ソンペット (1997) ラオス国PHC活動の評価のための基礎調査. 日公衛誌 44 1460.

 

5. その他

M97001: 小杉忠誠, 上田智之, 古閑敏徳, 佐藤良也, 井上文英, 有泉誠, 古田賢治 (1997) 琉球大学医学部における「実験動物」教育の現状. アニテックス 9 111-114.