細菌学講座

 

A. 研究課題の概要

 

1. 腸管感染症とワクチン抗原の開発

 ビブリオ科の病原菌 (特にコレラ菌)・腸内細菌科の病原菌 (特に赤痢菌と大腸菌) を中心に腸管および尿路の感染症について研究を進めている。病原因子の研究は細菌側における接着因子と毒素, 宿主側におけるレセプターと生体の反応に重点を置いているが, それは直ちにワクチン抗原の開発へと繋がるものである。

 現在進行中のテーマは, 1)コレラ菌の定着因子 (仲宗根・本馬), 2)赤痢菌の細胞侵入性に及ぼす低濃度マクロライドの影響とその作用機序 (本馬), 3)コレラ菌LPS と菌定着の関連性 (トーマ), 4)アエロモナスのプロテアーゼ (トーマ), 5)大腸菌 O157 について, 血清疫学 (トーマ)・ベロ毒素VT1の人体内レセプター分布 (江川)・Type 1 線毛 (江並), EPEC の新型線毛 (池間), 6)血清型 O3:K6 腸炎ビブリオの分子疫学 (本馬・比嘉・江並), 7)大腸菌の腸管病原因子と血清型 (本馬・比嘉), 8)コレラ菌の in vivo における生態と防御抗原 (池間・江並)

 

2. 尿路感染症

 現在進行中のテーマは, 1)尿路感染における大腸菌 Type 1 線毛の病原的役割 (謝花), 2)大腸菌溶血毒素の尿路感染症における役割 (川上), 溶血性大腸菌の尿路上皮定着因子 (川上), これらは将来病巣内細菌の解析という大きなテーマへと発展させるものである。3)尿路結石の発生予防と治療に関する細菌酵素の応用研究 (外間), 腸内在住菌における Oxalobacter formigens 以外で蓚酸脱炭酸酵素を産生する菌の検索・遺伝子組換え体の蓚酸脱炭酸能解析に続いて動物における実験結石症の発生予防と治療に関する動物実験をおこなう。

 

3. その他

鼻腔内細菌叢における黄色ブドウ球菌の生態と定着抑制因子 (垣花・比嘉・江並)

 

4. 細菌の生物学的研究

 これは疾患に直結する医学細菌学ではないが, 病原遺伝子の伝達・変異など生物学の基本的な現象とそのメカニズムを明らかにするものであり, 医学への応用が期待される。

現在進行中のテーマは新たに発見されたコレラ菌の線状ファージに関するものであり, 一本鎖線状 DNA を genome として有する線状ファージ fs1 (本馬) および fs2 (池間), O3:K6 腸炎ビブリオの線状ファージ (仲宗根) の遺伝子解析が順調に進んでいる。

 

5. 熱帯地における感染症 (特に下痢症) の疫学的研究

 インドネシア・ドミニカ共和国・ラオスなどにおいて下痢症の疫学的研究を行っている。学術振興会の研究費によるインドネシア・アイルランガ大学との共同研究では, 1995年度から新たに「マクロライド剤による侵襲性下痢症の治療」というテーマで研究を行っている (仲宗根・本馬)。インドネシア側では臨床症例の検討を, 当教室では薬剤の作用機序を研究している (1998年までの予定)。さらに, 1997年度からは熱帯地における出血性大腸菌特に O157 の検出頻度・分布などに関する研究も始めた。ラオスでは下痢症のほかにMRSAを監視するため, 毎年ブドウ球菌の薬剤感受性パターンを調査しつつ耐性遺伝子 mec A のスクリーニングを続行している (比嘉)。JICAによる公衆衛生プロジェクトが終了する1998年9月以降は教室対ラオス国立衛生疫学研究所との共同研究を続行していく予定である。

 

6. 免疫における自己・非自己の識別機構

 T-細胞以外でヘルパー作用を有する骨髄中の未分化細胞について解析を行い, 腫瘍に対する免疫療法及び移植免疫の抑制方法の開発を試みている (田邊・真栄城・大城)。

 

 

B. 研究業績

 

1. 原著

G97099: Toma C, Sisavath L, Higa N, Iwanaga M (1997) Characterization of Vibrio cholerae O1 isolated in Lao People's Democratic Republic. Jpn J Trop Med Hyg 25 85-87.

 

G97100: Insisiengmay S, Munnalath K, Sithivong N, Sisavath L, Panthouamas B, Chomlask K, Higa N, Yamashiro T, Nakasone N, et al (1997) Etiology of diarrheal diseases and the healthy carrier of enteropathogens in Vientiane, People's Democratic Republic of Lao. Jpn J Trop Med Hyg 25 89-93.

 

G97102: Iwanaga M, Sisavath L, Higa N, Honma Y, Kakinohana S (1997) Emergence of methicillin resistant Staphylococcus aureus in Laos. Jpn J Trop Med Hyg 25 103-106.

 

G97103: Honma Y, Iwanaga M (1997) Conservation of cholera toxin gene in a strain of cholera toxin non-producing Vibrio cholerae O1. FEMS Microbiol lett 154 111-116.

 

G97104: Ehara M, Shimodori S, Kojima F, Ichinose Y, Hirayama T, Albert MJ, Supawat K, Honma Y, Iwanaga M, et al (1997) Characterization of filamentous phage of Vibrio cholerae O139 and O1. FEMS Microbiol lett 154 293-301.

 

G97105: Iwanaga M, Honma Y, Enami M (1997) Molecular epidemiology of Vibrio cholerae O1 isolated from sporadic cholera cases in Okinawa, Japan. Microbiol Immunol 41 861-864.

 

G97106: Toma C, Sisavath L, Iwanaga M (1997) Reversed passive latex agglutination assay for detection of toxigenic Corynebacterium diphtheriae. J Clinical Microbiol 35 3147-3149.

 

G97107: 江並美香 (1997) 二種類の生菌製剤で使用されている同一菌種Clostridium butyricum 株の性状比較. 臨床と微生物 24 891-896.

 

G97110: Honma Y, Ikema M, Toma C, Ehara M, Iwanaga M (1997) Molecular analysis of a filamentous phage (fs1) of Vibrio cholerae O139. Biochim Biophys Acta (Molecular Basis of Disease) 1362 109-115.

 

4. 報告

H97107: 本馬恭子, トーマクラウディア, 池間正英, 仲宗根昇, 江原雅彦, 岩永正明 (1997) Vibrio cholerae O139 線状ファージ (fs1) の遺伝子解析. 日細菌誌 52 253.

 

H97108: トーマクラウディア, 本馬恭子, 岩永正明 (1997) Vibrio cholerae aminopeptidase 遺伝子の発現と酵素の生化学性状. 日細菌誌 52 109.

 

5. その他

M97101: 岩永正明 (1997) コレラ 12 感染性疾患. 亀山正邦, 亀田治男, 高久史麿, 阿部令彦, 第4版「今日の診断指針」, 医学書院, 東京, 1192.

 

M97108: 宮田彬, 中島一敏 (1997) 海外における医療・検査事情 ドミニカ共和国, 国立アイバール病院消化器疾患センターの細菌・寄生虫検査の現状. モダンメディア 43 117-121.