生理学第一講座

 

A. 研究課題の概要

1.ハブ粗毒のフィブリン形成初期相に及ぼす抗毒素の意義

 トロンビンやトロンビン様酵素により、フィブリノーゲンからフィブリンが形成される際には、その初期の段階においてFPAの遊離がみられる。この事実から、血漿中のFPA量を測定することにより、フィブリン形成初期相の状態を把握し、その後に引き続く凝固カスケードの病態を予測することができる。本研究ではハブ粗毒の持つフィブリン形成活性を中和する抗毒素量をin vitro 実験から測定し、中和量算出式を確立する。さらには、フィブリン形成中和抗毒素量が、同時にFPA遊離量の抑制、Aα鎖分解の阻害を濃度依存性に行うかを検討する。

 

 

2.ハブ毒由来トロンビン様酵素ハブトビンの家兎フィブリノーゲン分解機序の解明

 ハブトビンは家兎フィブリノーゲンのみに特異的に作用してフィブリノペプタイドA (FPA)のみを遊離し、フィブリン塊を形成することをすでに明らかにした。本研究では、ハブトビンにより遊離するFPAと家兎フィブリノーゲン Aα鎖のアミノ酸配列の決定を行い、ハブトビンの家兎フィブリノーゲン Aα鎖切断部位の同定を行う。さらには、得られたアミノ酸配列を基に、ハブトビンが家兎フィブリノーゲンAα鎖を認識する際に関与する、家兎フィブリノーゲン Aα鎖中のアミノ酸残基の特定を試みる。

 

 

3.抗原特異的ラットIgEの生体内運命

 DNP-Ascaris 感作ラットを用いたこれまでの研究から、血中IgEレベルの減少期に気道反応性の亢進が認められることが明らかになっている。この結果より、気道反応性の亢進は血中のIgE量ではなく、組織へ移行するIgE量と関連があると考えられる。本研究では、感作および非感作ラットを用いて、抗原特異的ラットIgEの血管内および血管外動態の解明を行なう。これらの実験結果から、I 型アレルギー反応初期の統禦方法を模索する。

 

 

4.沖縄のI 型アレルギーの地域特性

 本研究では、気象と喘息発作出現との関係を長期間にわたり調査している。喘息発作出現数と平均温度、平均蒸気圧、平均相対湿度、平均風速、平均海面気圧との関係を調査している。これらの調査結果を他地域のそれと比較し、沖縄のI 型アレルギー発症における気象条件の関与について、その地域特性を明らかにする。

 

 

5.線溶系酵素の上気道病態における役割と意義

 血管外線溶系の生理学的、病態生理学的意義と血管内線溶系のそれとは、多くの点で異なっている。本研究では、中国広西医科大学との共同研究により、上咽頭癌組織における線溶系酵素、すなわち、t-PA, u-PA, PAI-1 活性、抗原量の癌進行度との関連において追求し、上咽頭癌における局所浸潤と線溶系酵素の関連を明らかにする。

 

 

6.クロット形成後トロンビンの活性特性とその存在様式

 血栓溶解療法やPTCA、PTCR後に再狭窄の発現がしばしばみられる。この再狭窄発現に凝固系因子の関与が注目されている。本研究では、この凝固系因子としてクロット形成後のトロンビンに注目し、研究が進められている。まず、クロット形成後トロンビンの定量法を開発し、その濃度測定法を確立した。次いで、クロット形成後トロンビンのフィブリン形成活性、アミド分解活性をnative トロンビンのそれと比較した。また、クロット形成後トロンビンは、フィブリノーゲン構造の一部との複合体を形成している可能性が見い出されている。クロット形成後トロンビンと結合しているフィブリノーゲン構造の由来物質の同定を現在行っている。

 

 

B.研究業績

 

1.原著

G9601: Sunagawa M, Hanashiro K, Nakamura M and Kosugi T (1996) Habutobin releases plasminogen activator (u-PA) from bovine pulmonary artery endothelial cells. Toxicon 34, 691-699.

 

G9602: Hanashiro K, Nakamura M, Tamaki N, Kosugi T (1996) Production of a monoclonal dinitrophenyl-specific rat IgE and establishment of an IgE capture ELISA for estimating the concentration of rat IgE antibodies to dinitrophenyl-Ascaris summ. Int Arch Allergy Immunol 110, 371-379.

 

G9603: Oka U, Nakamura M, Kinjoh K and Kosugi T (1996) d2-macroglobulin of rabbits inhibits the habutobin activity. Toxicon 34, 903-912.

 

G9604: Yamashita S, Nakamura M, Tokeshi Y, Miyagi C, Sunagawa M and Kosugi T (1996) Effect of habu (Trimeresurus flavoviridis) antivenom on changes of hemostatic parameters following administration of crude venom from T. flavoviridis in rabbits. Toxicon 34, 893-902.

 

G9605: Hanashiro K, Kosugi T, Tamaki N, Sunagawa M and Nakamura M (1996) Identification of IgE with low molecular weight from serum of rats sensitized with DNP-Ascaris. Ryukyu Med J 16, 111-116.

 

G9606: Sunagawa M, Huang G-W, Nakamura M and Kosugi T(1996) Measurement of a small amount of t-PA antigen in tissue extract derived from nasopharyngeal carcinoma. Ryukyu Med J 16, 23-25.

 

G9607: 井上文英、松山玲子、上田智之、小杉忠誠 (1996) Helicobacter属菌(H. felis, H. muridarum, H. mustelae)の形態と構成タンパクの比較. 医と生物132, 247-250.

 

G9608: 古閑敏徳、当銘由承、金城清徳、上田智之、小杉忠誠 (1996) 琉球大学医学部附属動物実験施設における自動火災受信機の作動状況. 実験動物技 31, 83-88.

 

G9609: 小杉忠誠、花城和彦、山下晋、玉城昇、宮城一郎、當間孝子(1996) 亜熱帯地域の?型アレルギー疾患の特性. アレルギーの領域 3, 84-88.

 

 

3.著書

T9601: 小杉忠誠、中村真理子、金城紀代彦 (1996) 沖縄のハブ毒―止血機構関与物質―. 琉球大学医学部附属地域医療研究センター編, 「沖縄の疾病とその特性」, 九州大学出版会, 福岡, 181-196.

 

 

4.報告

H9601: Sunagawa M, Hanashiro K, Nakamura M, Kosugi T (1996) Habutobin (Thrombin-like enzyme) releases of u-PA and PAI from cultured endothelial cells. Fibrinolysis 10, 73.

 

H9602: Miyagi C, Kinjoh K, Nakamura M, Nejime T, Kosugi T (1996) Measurements of rabbit fibrinopeptide B (FPB) by competitive enzyme linked immunoassay (CELIA). Jpn J Physiol 46, S67.

 

H9603: Yamashita S, Nakamura M, Sunagawa M, Hanashiro K, Kinjoh K, Kosugi T (1996) Studies on thrombin activity in the liquid phase after clot formation. Jpn J Physiol 46, S67.

 

H9604: Tokeshi Y, Nakama Y, Miyagi C, Nakamura M, Kosugi T (1996) Habu antivenom inhibits the activity of habutobin. Jpn J Physiol 46, S67.

 

H9605: Sunagawa M, Hanashiro K, Kinjoh K, Nakamura M, Kosugi T (1996) Habutobin releases plasminogen activator (u-PA) from bovine pulmonary artery endothelial cells. Jpn J Physiol 46, S68.

 

H9606: Nakamura M, Kinjoh K, Miyagi C, Tokeshi Y, Kosugi T (1996) Investigation on the mechanism of defibrination induced by administration of habutobin to rabbits. Jpn J Physiol 46, S68

 

H9607: Kinjoh K, Nakamura M, Miyagi C, Tokeshi Y, Nejime T, Kosugi T (1996) Determination of the concentrations of fibrinopeptides in rabbit plasma using HPLC. Jpn J Physiol 46, S70.

 

H9608: Hanashiro K, Kosugi T, Tamaki N, Sunagawa M, Nakamura M (1996) Estimation of antigen-specific rat IgE antibodies by IgE-capture ELISA. Jpn J Physiol 46, S225.

 

H9609: Kosugi T, Hanashiro K, Tamaki N, Sunagawa M, Nakamura M (1996) Concomitant measurement of antigen-specific IgE and IgG antibodies in the serum of rats sensitized with DNP-As. Jpn J Physiol 46, S225.

 

H9610: 花城和彦、小杉忠誠、玉城昇、砂川昌範、中村真理子 (1996) ELISA法を用いたDNP-As感作ラット血中の抗原特異的IgE抗体とIgG抗体の同時測定―IgE抗体量推移とIgG抗体量推移の解離―. アレルギー45, 986.

 

H9611: 砂川昌範、渡慶次賀博、花城和彦、中村真理子、小杉忠誠 (1996) トロンビン様酵素(ハブトビン)による血管内皮細胞からの線溶系物質の放出. 日血栓止血誌 7, 390.

 

H9612: 金城紀代彦、中村真理子、宮城智恵美、山下晋、小杉忠誠 (1996) 家兎フィブリノペプタイドのHPLCによる定量法. 日血栓止血誌 7, 406.

 

H9613: 山下晋、中村真理子、金城紀代彦、花城和彦、小杉忠誠 (1996) Clot形成後Thrombinの活性特性とその存在様式. 日血栓止血誌 7, 407.

 

H9614: 山下晋、中村真理子、金城紀代彦、花城和彦、小杉忠誠 (1996) Clot形成後Thrombinの活性特性とその測定法. 脈管学 36, 774.

 

H9615: 小杉忠誠、升田好樹、金城紀代彦、山下晋、砂川昌範、中村真理子 (1996) アルガトロバンの人工血栓形成への影響. 脈管学 36, 774.

 

H9616: 中村真理子、渡慶次賀博、宮城智恵美、砂川昌範、小杉忠誠 (1996) ハブ毒による止血機構破綻に対するはぶウマ抗毒素の抑止機構. 脈管学 36, 775.

 

H9617: 花城和彦、小杉忠誠、玉城昇、渡慶次賀博、金城紀代彦、中村真理子 (1996) モノクローナルDNP特異的ラットIgEとラットmyeloma IgE (IR162) の物理化学的性質の比較. 日病生誌 5, 45.

 

H9618: 花城和彦、小杉忠誠、玉城昇、渡慶次賀博、金城紀代彦、中村真理子 (1996) 感作ラットの血中IgE量と気道反応性との関連. 日病生誌 5, 46.

 

H9619: 村山貢司、高嶋宏哉、伊東繁、鈴木修二、鎌倉稔成、小杉忠誠、浅井義之、寺道由晃、杉本日出雄、三島健、森光弘 (1996) 台風通過時の喘息患者数. 日生気誌 33, S55.

 

H9620: 渡慶次賀博、仲真良彦、宮城智恵美、砂川昌範、中村真理子、小杉忠誠 (1996) Antivenomはハブトビンのフィブリン形成活性を抑制する. 日生理誌 58, 19-20.

 

H9621: 金城紀代彦、中村真理子、花城和彦、山下晋、玉城昇、根占哲也、小杉忠誠 (1996) 家兎フィブリノペプタイドのHPLCによる定量法. 日生理誌 58, 27.

 

 

5.その他

M9601: 小杉忠誠、中村真理子、金城紀代彦 (1996)ハブ毒の止血機構関与物質―トロンビン様酵素を中心に―. 日臨化会九州会誌 6, 68-84.

 

M9602: 小杉忠誠、玉城昇、仲程一博、上原弘行、宮城一郎、當間孝子、岸本真知子、山下晋、花城和彦 (1996) ぜん息発作を誘発する気象因子の解明と発作回避策に関する研究. (沖縄のデーター). 公害健康被害補償予防協会委託業務報告書(1-B)気管支ぜん息に対する各種療法、増悪回避策に関する研究報告書. 96-99.