細菌学講座

 

A.研究課題の概要

1.腸管病原細菌の病原因子解析とワクチン抗原の開発

 ビブリオ科の病原菌特にコレラ菌・赤痢菌・大腸菌を中心として研究を進めている。病原因子の研究は第一に腸上皮への定着機構・定着因子・レセプターの研究,第二に病原毒素の研究である。現在進行中のテーマは,コレラ菌の定着因子(仲宗根),赤痢菌の細胞侵入性とマクロライド薬剤の作用機序(本馬),細菌毒素(トーマ・江川),大腸菌の病原因子と血清型(砂辺・本馬・比嘉)であるが,平成9年度にはコレラ菌のin vivoにおける生態と防御抗原(池間・江並)がスタートする。

 

2.尿路病原大腸菌の病原因子とその発現,および尿路感染症

 現在進行中のテーマは尿路内における大腸菌の生態(大湾・外間),尿路におけるType I線毛・P線毛の病原的役割(謝花・外間),大腸菌溶血毒素の尿路感染症における役割(川上・本馬)であるが,これは将来病巣内細菌の解析という大きなテーマへと発展させるものである。その他,老人性慢性尿路感染症の病態と潜在的臨床症状(垣花)。

 

3.細菌の生物学的研究

 これは疾患に直結する医学細菌学ではないが,病原遺伝子の伝達・変異など生物学の基本的な現象とそのメカニズムを明らかにするものであり,医学への応用が期待される。現在進行中のテーマは新たに発見されたコレラ菌の線状ファージに関するものであり,一本鎖線状DNAをgenomeとして有する線状ファージfs1(本馬)およびfs2(池間)の遺伝子解析が順調に進んでいる。

 

4.熱帯地における感染症(特に下痢症)の疫学的研究

 インドネシア・ドミニカ共和国・ラオスなどにおいて下痢症の疫学的研究を行っている。学術振興会の研究費(下痢班は約850万円)によるインドネシア・アイルランガ大学との共同研究では,1995年度から新たに「マクロライド剤による侵襲性下痢症の治療」というテーマで研究を始めた(仲宗根・本馬)。インドネシア側では臨床症例の検討を,当教室では薬剤の作用機序を研究している(1998年までの予定)。またラオスでは下痢症の他にMRSAを監視するため,毎年ブドウ球菌の薬剤感受性パターンを調査しつつ耐性遺伝子mecAのスクリーニングを続行している(比嘉・仲宗根)。

 

5.免疫における自己,非自己の識別機構

 T-細胞以外でヘルパー作用を有する骨髄中の未分化細胞について解析を行い,腫瘍に対する免疫療法および移植免疫の抑制方法の開発を試みている(田辺・真栄城・大城)。

 

 

B.研究業績

1.原著

G96091: Toma C, Honma Y, Iwanaga M (1996) Effect of Vibrio cholerae non-O1 protease on lysozyme, lactoferrin and secretory immunoglobulin A. FEMS Microbiol lett 135 143-147.

 

G96092: Nakasone N, Iwanaga M, Yamashiro T, Nakashima K, M John Albert (1996) Aeromonas trota strains, which agglutinate with Vibrio cholerae O139 Bengal antiserum, possess a serologically distinct fimbrial colonization factor. Microbiology 142 309-313.

 

G96093: 大湾知子 (1996) 尿路感染症の尿中における病原細菌の生態. 感染症学雑誌 70 681-689.

 

G96096: Chinen I, Toma C, Honma Y, Higa N, Iwanaga M (1996) Hemolysin production by Vibrio cholerae as examined by hemolytic and antigenic activities. Jpn J Trop Med Hyg 24 151-155.

 

G96097: Toma C, Honma Y (1996) Cloning and genetic analysis of the Vibrio cholerae aminopeptidase gene. Infect Immun 64 4495-4500.

 

G96098: Yamashiro T, Iwanaga M (1996) Purification and characterization of a pilus of a Vibrio cholerae strain : a possible colonization factor. Infect Immunity 64 5233-5238.

 

4.報告

H95090: 加藤直樹, 加藤はる, 渡辺邦友, 上野一恵, 岩永正明 (1995) インドネシアにおける乳幼児下痢症原因菌としての下痢原性嫌気性菌. 感染症学雑誌 69(臨) 188.

 

H96091: 岩永正明, 大湾知子 (1996) 病巣中細菌の性状 : 1. 尿路感染. 感染症学雑誌 70 423.

 

H96094: 本馬恭子, 岩永正明 (1996) コレラ毒素非産生 (検出不能 )コレラ菌BT23株の遺伝子解析. Jpn J Bacteriol 51 209.

 

H96095: 玉元徹, 中島一敏, 岩永正明 (1996) V. cholerae O1 strain 395 の小腸上皮定着におけるTCP線毛の関与について. Jpn J Bacteriol 51 167.

 

H96096: 山城哲, 仲宗根昇, 岩永正明 (1996) Vibrio cholerae のフレキシブルタイプ線毛と定着因子. Jpn J Bacteriol 51 168.

 

5.その他

M96094: 岩永正明 (1996) コレラ(Cholera) 特集−腸管感染症−. Clinical Infection and Chemotherapy 2 40-41.

 

M96095: 本馬恭子 (1996) コレラ cholera −輸入感染症を中心に−. 齊藤厚編, 忘れてはならない感染症, 日本アップジョン株式会社 7月号 6-10.