臨床検査医学科講座

 

A.研究課題の概要

1.バンコマイシン耐性腸球菌の遺伝学的・疫学的解析 (山根 誠久)

 欧米諸国でのバンコマイシン耐性腸球菌の拡がりに伴い, 国内での研究, 監視体制の確立が急務となっている。国内分離の腸球菌を試験しているが, 現在まで耐性伝達可能なVanA型, VanB型耐性の菌株は同定されていない。米国より分与された菌株を用い, PCR法でのgenotypeの同定, 薬剤感受性試験でのphenotypeの同定技術が確立された。

 

2.抗真菌剤薬剤感受性試験の開発と臨床応用 (山根 誠久)

 酵母真菌を対象とする薬剤感受性試験を開発し, その臨床応用を進めている。新たに開発したcolorimetric microdilution法は再現性, 施設間での互換性に優れ, 極めて近い将来の実用化が計画されている。この試験方法を応用し, 複数薬剤での相互作用の解析を進めている。

 

3.沖縄県における長寿要因の解析(玉元, 戸田)

 宮古郡の健常成人300名を対象に血清Lp(a)をELISA法で測定した。対象者全体の平均は, 20.8±15.8 mg/dlであり, 他府県に比べて高値であったが, 性差は見られなかった。20才代と30才代は、血清Lp(a)濃度の平均値が低い傾向にあった。 宮古郡の分布は, 世界的に見て, インド人の分布に比較的類似していた。

 

4.鳥類モデルにおける実験的粥状硬化症の研究(戸田, 玉元)

 ニワトリ大動脈の粥状硬化病変を電顕, 免疫組織学的に検討した。マクロファージ, 線維芽細胞, 平滑筋細胞由来の脂肪含有細胞と変性壊死細胞が観察された。 c-myc, c-fos, PDGF, PDGFレセプターの発現も確認された。DNAの断片化は認められなかったが, TNFレセプタ−やFasの発現が観察された。粥状硬化惹起因子による内膜細胞の核内転写関連因子を介した細胞増殖因子や細胞壊死関連因子の活性化が粥状硬化症の発生進展に関与している可能性が示唆された。

 

5.院内感染(草野展周)

 院内感染において重要なMRSAを初めとした細菌の琉球大学附属病院における分離状況および薬剤感受性の変化を調査し, 報告している。また, 院内感染対策として病棟における汚染状況や保菌状況, 消毒法の検討なども行っている。

 

6.細菌の薬剤耐性とその疫学(草野展周)

 各種臨床材料から分離される細菌における薬剤耐性の変化を調査している。近年はβ-ラクタム系薬剤の多くに高度耐性を示す緑膿菌を初めとしたグラム陰性菌の分離が増加しており, カルバペネム系抗菌薬にも耐性を示す株が分離されている。また, ペニシリン耐性肺炎球菌はペニシリン以外のβ-ラクタム系薬剤に耐性を示す株が増加しており, 多剤耐性化傾向にある。特にニューキノロンでの高度耐性株が琉球大学病院でも分離されており, その耐性機序についてPCRを用いて検討を行っている。

 

 

B.研究業績

1.原著

G96001: Shimizu M, Yoshida T, Toda T, Iwashima A, Mitsunaga T (1996) Isolation of a thiamine binding protein from rice germ and distribution of similar proteins. Biosci Biotech Biochem 60 453-457.

 

G96002: Sadi AM, Toda T, Oku H, Hokama S (1996) Dietary effects of corn oil, oleic acid, perillaoil, and primrose oil on plasma and hepatic lipid level and atherosclerosis in Japanese quail. Exp Anim 45 55-62.

 

G96003: Kudeken N, Kawakami k, Kusano N, Saito A (1996) Cell-mediated immunity in host resistance against infection caused by Penicillium marneffei. J Med Veter Mycol 34 371-378.

 

G96004: Koide M, Saito A, Kusano N, Tateyama M, Inadome J, Kyan Y, Kisyaba T, Miyagi S (1996) Relation between the polymerase chain reaction and the indirect fluorescent antibody method in the diagnosis of Legionella infection. Clin Infect Dis 23 656-657.

 

G96005: Yonamine M, Aniya Y, Yokomakura T, Koyama T, Nagamine T, Nakanishi H (1996) Acetaminophen-derived activation of liver microsomal glutathione S-transferase of rats. Jpn J Pharmacol 72 175-181.

 

G96006: 山根誠久, 戸坂雅一, 岡沢豊 (1996) 酸化還元反応呈色色素を用いた微量液体希釈法での抗真菌剤薬剤感受性試験の検討―National Committee for Clinical Laboratory Standards(NCCLS) M27-Pとの比較評価試験―. 臨床病理 44 67-75.

 

G96007: 外間政哲, 戸田隆義, 草野展周, 中村広, 仲宗根勇, 長嶺辰美, 浦崎裕子, 知念清栄, 金城典子, 他5名 (1996) 当院検査部に於ける寄生虫の検出状況. 臨床病理 44 379-383.

 

G96008: 山根誠久, 大岩雄, 清田敏幸, 斉藤宏, 園田敏雄, 戸坂雅一, 中嶌雅信, 福永均, 正木孝幸, 他3名 (1996) 酸化還元反応呈色色素を用いたマイクロプレート法での結核菌薬剤感受性試験の検討:NCCLS M24-Pを参照法とした複数施設での共同評価. 臨床病理 44 456-464.

 

G96009: 坂本福美, 山根誠久, 上村弘子 (1996) 血清中HBs抗原測定における自動化測定機器および簡易測定法での最小検出感度と偽陰性頻度の解析. 日臨検査自動化会誌 21 265-272.

 

G96010: 山根誠久, 宮川静代, 田辺忠夫 (1996) 全自動細菌検査装置, Vitek Systems 菌種同定試験における同定不能(Unidentified Organisms)の解析―福岡県および熊本県における調査成績―. 日臨検自動化会誌 21 692-696.

 

G96011: 上村弘子, 坂本福美, 山根誠久 (1996) Vitek Immuno Diagnostic Assay System (Vidas)を用いたMumps Virus およびVaricella-zoster Virus 特異IgG抗体の測定. 日臨検自動化会誌 21 726-734.

 

G96012: 久手堅憲史, 川上和義, 當山雅樹, 草野展周, 斉藤 厚 (1996) マウスPenicillium marneffei肺感染症に対するインターロイキン12の治療効果. 感染症誌 70 842-843.

 

G96013: 山根誠久, Chilima BZW, 戸坂雅一, 岡沢豊, 丹野和信 (1996) 異なる培地組成でのニューキノロン系抗菌薬6剤のMycobacterium tuberculosis 臨床分離株に対するin vitro 抗菌活性の測定. 結核 71 453-458.

 

G96014: 我謝道弘, 普久原 浩, 稲留 潤, 久貝雪野, 斉藤 厚, 草野展周, 健山正男, 上間 一 (1996) 呼吸器感染症に対するNM441の基礎的ならびに臨床的検討. 日化療会誌 44 356-361.

 

G96015: 田場秀樹, 當山雅樹, 豊田和正, 新里 敬, 斉藤 厚, 仲宗根 勇, 草野展周 (1996) Pseudomonas aeruginosa に対する各種ニューキノロン系抗菌薬のin vitroおよびin vivoにおける抗菌効果の比較検討. 日化療会誌 44 493-498.

 

G96016: 永田邦昭, 三野博利, 作本省悟, 山根誠久, 宮川静代, 戸坂雅一 (1996) “ Streptococcus milleri ”groupに含まれる3菌種の細菌学的特性と薬剤感受性. 医学検査 45 1710-1716.

 

G96017: 戸坂雅一, 山根誠久, 園田敏雅 (1996) AmplicorTMPCR法によるMycobacterium tuberculosisの喀痰検体からの直接検出.JARMAM 7 77-82.

 

G96018: 松岡喜美子, 永冨由美子, 今西啓子, 松原正樹, 山根誠久, 岡沢豊 (1996) 呈色色素反応―ドライプレート法による微量液体希釈法―を用いた抗真菌剤薬剤感受性試験. 臨床と微生物 23 101-110.

 

2.総説

S96001: 新里 敬, 草野展周 (1996) 病原的意義が不明確な病原体の位置づけ 3. Streptococcus milleri group. 日臨微誌 6 39-42.

 

S96002: 草野展周 (1996) Streptococcus milleri groupの検出法とその臨床. 日臨微誌 6 77-82.

 

S96003: 山根誠久 (1996) インフルエンザワクチン. 呼吸 15 181-185.

 

S96004: 山根誠久 (1996) 抗菌薬の抗菌力試験. 判定基準. 検査と技術 24 245-248.

 

S96005: 仲宗根勇, 山根誠久 (1996) 真菌の感受性試験. 検査と技術 24 1009-1015.

 

S96006: 山根誠久 (1996) 抗酸菌検査における技術革新. Med Technol 24 93-100.

 

S96007: 仲宗根勇 (1996) Entamoeba histolyticaによるアメーバ赤痢. Med Technol 24 148-151.

 

S96008: 山根誠久 (1996) 抗真菌剤の薬剤感受性試験. Med Technol 24 645-652.

 

S96009: 山根誠久 (1996) 検体検査の業務感染. 臨床検査 40 11-16.

 

S96010: 新里 敬, 草野展周 (1996) Streptococcus milleri group. 臨床検査 40 399-403.

 

S96011: 新里 敬, 草野展周 (1996) Streptococcus milleri. Cur Clin Technol 2 257-259.

 

S96012: 田場秀樹, 草野展周 (1996) 感染症の迅速診断 臨床医 22 2168-2170.

 

S96013: 山根誠久 (1996) 感染症診断における免疫学的診断法の現状. ル・デパール 5 1-3.

 

3.著書

T96001: Yamane N, Ueda K, Kimura M, KI-207 Evaluation Group (1996) A large-scale field trial of trivalent cold-adapted influenza virus live vaccine in Japan. In Brown LE, Hampson AW, Webster RG Ed. Options for the Control of Influenza III, Elsevier, Amsterdam, 628-633.

 

T96002: 草野展周 (1996) 在郷軍人病(レジオネラ症). 稲垣義明, 多須賀幸男, 尾形悦郎, 編「今日の治療指針1996年版(Volume 38)」, 医学書院, 東京, 10-12.

 

T96003: 當山直人, 草野展周 (1996) 臨床材料からの分離頻度. 斉藤 厚, 山口惠三, 編「緑膿菌の今日的意味」, 医薬ジャーナル, 東京, 35-45.

 

T96004: 當山直人, 草野展周 (1996) 3. 腸チフス. 斉藤 厚, 編「忘れてはならない感染症―輸入感染症を中心に―」, 日本アップジョン, 東京, 10-12.

 

4.報告

H96001: Sadi AM, Toda T, Kiyuna M, Miyagi H (1996) Mixed gonadal dysgenesis with gonadoblastoma in a female with Y chromosome: Case report. J Obstet Gynaecol Res 22 25-30.

 

H96002: Sadi AM, Toda T, Kiyuna M (1996) A true hermaphrodite with bilateral ovotestes: A case report. J Obstet Gynaecol Res 22 247-251.

 

H96003: Tamai O, Yamada M, Matsumoto M, Shiraishi M, Kusano T, Muto Y, Toda T (1996) Flat elevated (de novo) carcinoma of the sigmoid colon with a pedunculated muscularis propria mimicking a polypoid carcinoma. Dig Surg 13 59-62.

 

H96004:Sadi AM, Toda T, Kiyuna M, Tamamoto T, Kina K, Yara A (1996) Rhabdomyoma of the heart of a neonate: An autopsy case report. Acta Paediatr Japo 38 361-364.

 

H96005: Higa T, Yamada M, Deguchi S, Tamaki S, Muto Y, Nakasone K, Kiyuna M, Toda T (1996) Malignant fibrous histiocytoma of the mesentery: A case report. Ryukyu Med J 16 75-78.

 

H96006: 宮城裕人, 仲本 敦, 豊田和正, 我謝道弘, 健山正男, 川上和義, 草野

展周, 斉藤 厚 (1996) 結核性肝脾腫瘍の1例. 感染症誌 70 1116-1121.

 

H96007: 新里 敬, 古波蔵紀子, 久場睦夫, 仲宗根恵俊, 宮城 茂, 喜屋武邦夫, 草野展周, 斉藤 厚(1996) Xanthomonas (Stenotrophomonas) maltophilia による肺炎の2例. 日胸臨 55 117-122.

 

H96008: 島袋誠守, 金城 僚, 青木啓光, 山里将人, 草野敏臣, 武藤良弘, 戸田隆義 (1996) 唾液瘻を伴った異所性唾液腺組織の2例. Ryukyu Med J 16 79-81.

 

H96009: 豊田善成, 仲宗根克, 大城朝光, 喜友名正也, AL Muktafi Sadi, Md Abdul Hye, 饒平名光三, 戸田隆義, 山根誠久, 砂川涼子 (1996) 腹水中に出現した皮膚原発悪性黒色腫一症例の細胞学的検討―特に細胞像を中心に―. 琉球医会誌 16 143-146.

 

5.その他

M96001: 山根誠久 (1996) 菌株輸入に関する注意事項. Med Technol 24 729-734.

 

M96002: 草野展周 (1996) 院内感染予防とICDN―琉球大学病院における院内感染予防について―. Ryukyu Med J 16 87-89.

 

M96003: 饒平名光三, 島袋美那子, 戸田隆義, 外間政哲, 平山清武 (1996) 当院における医師による生化学及び血中薬物濃度測定システムの使用状況について. 沖縄県臨床衛生検査技師会誌 35 18.