母子保健看護学教室・母子看護学教室

 

  1. 研究課題の概要

 

1.母乳栄養に関する研究

1)我が国の食生活環境は大きく変化しており、改訂「離乳の基本」には特別に鉄が不足しないための工夫が注として付記されている。平成8年度は、7年度に引き続き、離乳期の鉄の摂取状況を明らかにするために沖縄県中城村における乳児の栄養調査を行った。

乳児の離乳開始月齢は、4-5カ月に多く標準通りであったが、離乳後期にも3割の乳児は2回食のままであった。離乳期乳児の1日エネルギー摂取量は平均736Kcalであり、所要量に対する充足率は83.4%であった。母乳栄養児の1日平均鉄摂取量は2.7mgであり、混合・人工栄養児に比較して低く、鉄所要量充足率は45%であった。

 

2)離乳期貧血の要因として、母体の貧血をとりあげ鉄レベルの母子相関について検討した。母親のHb、MCV、SI、Ferの平均値は、いずれも新生児が高く、逆にTIBCは母親が高くなっていた。母親と新生児の相関は、SI値とFer値に有意の正の相関が認められた。

 母親のHb、SI、Fer値をそれぞれ高い群と低い群の2群に分け、母親のHb値を基準にSI値とFer値を組み合わせて、それぞれの鉄レベル間でHb、MCV、SI、TIBC、Ferの平均値の比較を行ったところ、Hb・SI値ともに低い母親から出生した新生児は、Hb値が低くSI値が高い母親から出生した新生児より、新生児SI値は有意に低値を示した。Hb・SI値ともに低い母親から出生した新生児は、Hb値が低くFer値が高い母親から出生した新生児より、新生児Fer値は有意に低値を示した。鉄レベル指標としてHb、血清鉄、TIBC、血清フェリチンを測定し、TIBC、血清フェリチン値には有意の正の相関関係が認められることを報告した。

 

3)母乳の感染防御能に関する研究の一環として、母乳栄養児の咽頭常在菌の特徴を明らかにするために、乳児の咽頭常在菌を栄養法別に比較検討した。咽頭常在菌のうちグラム陰性菌の検出頻度は、母乳群12.5%、混合群36.4%、人工群83.3%となっており、栄養法別に差がみられ、母乳群が最も少なかった。さらに母乳栄養児は、人工栄養児に比較して病原菌検出率も低いことを認め病原菌の咽頭への定着と増殖を抑制する機構について考察を加え報告した。

 

2.月経に伴う愁訴とサーモグラフィーを用いた自律神経機能との関連

 月経に伴う愁訴と自律神経機能との関連を把握するため、MDQ,CMIの質問紙法による調査と、サーモグラフィーを使い、冷却負荷試験前後の手掌の皮膚表面温度の変化を観察した。

 MDQの愁訴得点と愁訴数は、月経中、月経前、月経後の順に高く、冷却負荷後の皮膚表面温度の回復は、月経中が他のどの時期よりも遅いという結果を得た。また、月経前、月経中ともに愁訴の多い群が少ない群より遅かった。

 CMI型別における月経各時期の皮膚表面温度の変化は、月経中において準神経症といわれる?型が、?型(正常)、?型(準正常)に比べ回復が有意に遅かった。また、月経中においてCMIの自律神経項目の得点が高い群が、低い群に比べ皮膚表面温度の回復が有意に遅かった。

 本研究では、自律神経機能検査として採用したサーモグラフィーを用いた抹消冷却負荷試験から、これまでの報告と同様に、月経の各時期において自律神経機能の状態が異なる傾向にあることや、月経に伴う愁訴によって、また、精神面の状態によっても同様に自律神経機能の状態に異なる傾向がみられ、月経に伴う愁訴の要因には、自律神経機能の状態や精神的・身体的ストレスが大きく関与していることが示唆された。

 

3.ピア エデュケーションに関する研究

 高校生の性教育におけるピア エデュケーションを試み、性意識の変化をみてみた。対象は県立Y高校の2学年一クラスの生徒でピア エデュケーション実施前後で比較すると男子では、交際の限度について前調査で最も多かった性交をするが58%から後調査で37%に、同様女子ではキスをするが52%から25%に減少していた。性交についての考え方は、男子においては、肯定的意見否定的意見ともにピア エデュケーション後若干増加していた。女子では、肯定的意見は35%から10%へ、否定的意見は30%から32%へと変化しており、女子の方がより堅実的なとらえ方に変化している事が伺えた。

 今回は、最初にゲームを取り入れ、その後3グループに分かれて、避妊・STD・妊娠中絶の各テーマで話し合った。ゲームを行って後の話し合いだったので比較的スムーズになごやかな雰囲気のなかで進められた。2週間後に、各生徒お互いに話し合った者、話し合っていない者は同数で、話し合った生徒の方が若干知識は上まわっていた。また新しい試みとしてロールプレイを取り入れてみた。日頃親と接する機会の少ないM養護施設の高校生を対象に理想の父親像・母親像を考えてもらう為に演じてもらったが、ピア エデュケーションの一方法として効果があると思われた。

 

 

B.研究業績

1.原著

G9601: 外間登美子, 浜本いそえ, 宮城万里子, 竹中静廣 (1996) 母親の喫煙に関する調査成績(第2報)ー妊婦のアンケート調査よりー. 母性衛生 37(2) 236-238.

 

G9602: 塩川明子, 与儀智枝美, 荷川取次枝, 安里葉子, 浜本いそえ, 外間登美子 (1996) 中城村における乳幼児貧血の調査成績. 沖縄の小児保健 23 29-31.

 

G9603: 安里葉子, 外間登美子, 浜本いそえ, 与儀智枝美, 塩川明子, 荷川取次枝 (1996) 低出生体重児における離乳期貧血について. 沖縄の小児保健 23 32-34.

 

G9604: 外間登美子, 安里葉子, 浜本いそえ (1996) 中城村における離乳期の鉄の摂取状況. 小児保健研究 55 276-279.

 

G9605: Hokama T, Takenaka S, Hirayama K, Yara A, Yosida K, Itokazu K, Kinjho R (1996) Iron status of newborns born to iron deficient anemic mothers. Journal of tropical Pediatrics.42 75-77.

 

G9606: Hokama T, Hamamoto I, Takenaka S, Hirayama K, Yara A, Adjei A (1996) Throat microflora in breastfed and formulafed infants. Journal of Tropical Paediatrics.44 324-326.

 

G9607: Nakada Y, Kamiya K, Takaesu E, Oshiro S, Hokama T, Nakasone S, Hirayama K (1996) Definitions of severely mentally and physically disabled children in Japan ;do the differenc affect the prevalence rates of these children?. Acta Padiatrica Japonica 38 229-232 .

 

5.その他

M9601: 森奈美恵, 銘苅美都子, 浜本いそえ, 外間登美子, 竹中静廣 (1996) 新生児の黄色ブドウ球菌暴露状況1. 卒業研究小論文集 23 169-172.

 

M9602: 銘苅美都子, 森奈美恵, 浜本いそえ, 外間登美子, 竹中静廣 (1996) 新生児の黄色ブドウ球菌暴露状況2. 卒業研究小論文集 23 173-176.

 

M9603: 岩谷英里子, 伊良皆美香, 浜本いそえ, 外間登美子, 竹中静廣 (1996) 乳児の栄養法による咽頭細菌の比較. 卒業研究小論文集 23 177-180.

 

M9604: 時任美邦, 中村美智子, 山口朝子, 竹中静廣 (1996) 高校生の性に対する意識と調査. 卒業研究小論文集 23 181-184.

 

M9605: 荒木玲子, 村松有紀, 山口朝子, 竹中静廣 (1996) 性教育においてのピア カウンセリングを試みて. 卒業研究小論文集 23 185-188.

 

M9606: 天願優子, 平山清武, 竹中静廣 (1996) 思春期の学校や家庭に対する意識と身体症状や悩みに関する研究-数量化・類を用いての検討-. 琉球大学大学院保健学研究科修士論文

 

M9607: 安里葉子, 竹中静廣 (1996) 乳児栄養に関する研究-離乳食の進め方について-琉球大学大学院保健学研究科修士論文

 

M9608: 外間登美子, 安里葉子, 浜本いそえ (1996) 乳児の鉄栄養に関する研究-離乳期の栄養調査成績-. 小児保健研究 55 300-301.

 

M9609: 伊敷和枝, 山口朝子 (1996) 沖縄県における高校生の性意識の検討. 思春期学 14 66-67.