生理学第二講座


A.研究課題の概要

 1. 赤外線感受性を持つヘビの中枢神経系におけるNADPH-diaphoraseの分布 (寺嶋真一, 蒋彭佳)
 赤外線感受性のあるヘビの中枢神経系におけるNADPH-diaphorase (NADPH-d) の活性分布を調べた。 一酸化窒素合成の阻害剤であるdichloroindophenol (DPIP)をNADPH-d活性の特性を判別する為に使用した。強度又は軽度にNADPH-dで染められたニューロンがヘビの脳全体に, 嗅球, 交連下器官, 傍脳室灰白層, 青斑核, 後根, 後角, 及びX領域のような, 個別の個所で見られた。三叉神経下降路核と延髄網様体は多数の陽性細胞と線維を含んでいるが, 外側下降路核と熱核 (共に赤外線感覚系) には含まれていないことが特に注目される所見であった。陽性ニューロンと線維は脊髄より上の感覚神経節でも認められた。DPIPはNADPH-d活性を, 嗅球 / 副嗅球神経と糸球体を除く, 全ての個所で抑制した。
 これらの結果はヘビの脳におけるNADPH-d活性の存在を最初に証明したものであり, 一酸化窒素は, 赤外線感覚系以外の情報処理で, 多くの神経機能に関係していることを示唆している。
 2. 脳神経組織における アデノシンによる保護作用
  (宮本孝甫及び小倉記念病院研究部, 宮本忠臣との共同研究)
 虚血による神経細胞死滅に対してアデノシンは保護作用を発揮することは知られて居り, その説明としてアデノシンはA1受容体を経由して神経細胞の過分極をもたらし興奮性を抑制することによって興奮性伝達物質 (グラタメート, アスパルテート等) の過剰な放出をおさえるとされて来た。 我々はウサギの被殻, 海馬, 視床及び大脳皮質へのアデノシンの影響をmicrodialysis及びHPLC-ECDにて調べた。 各部位をアデノシンを加えたCSFにより灌流すると, その量に応じて抑制伝達物質として知られるタウリンが放出されるが興奮性伝達物質の放出には著名な変化は見いだされなかった。この事から中枢神経におけるアデノシンによる作用として知られて来たものには, アデノシンが直接作用するものと放出されたタウリンの効果によるものがあることを示唆している。
 3. 皮膚を支配する侵害受容神経終末におけるbradykininの発痛機序 (梁運飛, P.W. Reeh)
 ラットの「皮膚-伏在神経」標本を用い, 侵害性機械的及び輻射温熱刺激により反応した単一神経繊維の活動電位を記録した後にbradykinin及びbradykininの遮断剤を含んだ溶液で受容野を灌流し, 各種類の侵害性刺激に対する神経細胞の反応に及ばすbradykininの発痛作用及びbradykinin受容体の型を解明することを目的としている。
B.研究業績
 1. 原著
G95001: Terashima S, Jiang P-J, Mizuhira V, Hasegawa H, Notoya M (1995) Temperature-induced changes in the number of vesicles in the free nerve endings of temperature neurons of the snake. Somatosens Mot Res 12 143-150.
G95002: Sekitani-Kumagai M, Kadota T, Goris R C, Kusunoki T, Terashima S (1995) Calcitonin gene-related peptide immunoreactivity in the trigeminal ganglion of Trimeresurus flavoviridis. Neurosci Res 22 287-295.
G95003: Liang Y-F, Terashima S, Zhu A-Q (1995) Distinct morphological characteristics of touch, temperature, and mechanical nociceptive neurons in the crotaline trigeminal ganglia. J Comp Neurol 360 621-633.
G95004: Jiang P-J, Terashima S (1995) Selective labeling of [3H] 2-deoxy-D-glucose in the snake trigeminal system: Basal and infrared-stirnulated conditions. Somatosens Mot Res 12 299-307.
 4. 報告
H95001: Terashima S, Jiang P-J (1995) Expression of NAPDH-diaphorase in the crotaline nervous system. Soc for Neurosci Abstracts 25th Annual Meeting 1619.
H95002: Terashima S, Zhu A-Q (1995) Membrane properties of temperature neurons in a crotaline snake. 4th IBRO World Congress of Neuroscience 277.
H95003: Terashima S, Zhu A-Q (1995) Intracellular recordings in the lateral descending trigeminal nucleus in a crotaline snake. Jpn J Physiol 45 SUPPL 1 S138.
H95004: Terashima S, Zhu A-Q (1995) Membrane properties of C mechanical nociceptive neurons in crotaline snake trigeminal ganglia. The 2nd Joint Meeting of the Physiological Societies of Japan, U.K. and Eire. Okazaki Symposium Abstracts 43.
H95005: 蒋彭佳, 寺嶋真一 (1995) ハブの脳神経運動核間の[3H]2-DGラベルによる相違. 日生理誌 57 159.