生化学第二講座


A.研究課題の概要

 1. ヘモグロビンの機能および進化について, タンパク質および遺伝子のレベルで研究
  (武居洋, 中嶋安嗣, 池原強)
 鳥類および鰭脚類ヘモグロビンは複数成分でα鎖に差異があることが認められる。その機能的差異および進化的意義について研究するために, タンパクおよび遺伝子の解析を行う。
 2. ヘモグロビン遺伝子およびミトコンドリアDNAの塩基配列よりみた爬虫類,
   および魚類の系統進化に関する研究(武居洋, 中嶋安嗣, 江口知子, 大城稔)
 毒蛇類 (クサリヘビ科, コブラ科) , および魚類 (スズキ目, 骨鰾類) のグロビン遺伝子の構成, cDNAとゲノムDNAの塩基配列を解明し, その分子進化を理解することを目的とする。微量血液よりグロビンcDNA塩基配列を決定する方法の確立をめざしている。
 ミトコンドリアDNAの塩基配列からも種の系統進化を理解する目的で, ヘビ類, 魚類のミトコンドリアDNAの塩基配列を決定し, 進化速度を比較している。
 3. 東南アジアにおけるサラセミア症の分子病理学的研究 (武居洋, 中嶋安嗣, 安里剛)
 タイ北部のHb H病患者のαグロビン遺伝子変異を分析している。 特にHb Constant Spring保因者のPCR法による検出法を確立した。 一方βサラセミア症におけるαグロビン遺伝子異常の合併と臨床重症度についても遺伝子レベルで解析している。 またサラセミア症にみられるグロビンの過剰蓄積が赤血球前駆細胞の致死を引き起こすメカニズムについても分析を始めている。
 4. ヒトパピローマウイルス (HPV) について分子疫学的研究 (武居洋, 中嶋安嗣, 安里剛, 前濱俊之)
 当県の健常婦人におけるHPV感染率を把握するため, 子宮癌検診受診者を対象にPCR法によりHPV陽性者を確定し, 陽性率を割り出した。 その結果HPVの感染率は約10%(n=3500, L1 consensus primerによる) であった。 ハイリスクHPVのE6およびE7遺伝子の大部分に共通する構造を指標としてE6-E7遺伝子の検出される頻度を調べてみると, HPV感染例中23.6% (68 / 288) にE6-E7遺伝子の存在が確認され, その中にはすでに報告されているハイリスク型HPVと同定できないものも多く含まれる。 E6-E7遺伝子の存在が認められる例では沖縄地方特有のハイリスクHPV感染症も含まれると考えられ, その型の同定を試みるとともにE7タンパクのRBタンパクとの結合モチーフを分子進化学的に追求したい。
 最近我々は RT-PCR 法を利用して, 微量の細胞標本から HPV 遺伝子の mRNA を検出するシステムを確立した。臨床標本中の HPV oncoproteins の mRNA を検出することにより, 子宮頚癌をはじめHPVとの関連が疑われる悪性腫瘍の進行度, 治療効果, 再発の判定などに利用できるとともに, HPV の発癌への関わりについても重要な知見が得られると考える。
 5. ハブ毒による腫瘍細胞の致死作用に関する研究 (中嶋安嗣, 安里剛)
 横紋筋肉腫細胞株Kym-1などにハブ毒を作用させ, アポトーシスの誘導, そのときに発現されてくる遺伝子のsubtractive hybridizationによる単離, およびその遺伝子の構造, 機能を研究することを目的としている。
B.研究業績
 1. 原著
G95001: Oshiro C, Takasu N, Wakugami T, Komiya I, Yamada T, Eguchi Y, Takei H (1995) Seventeen α-Hydroxylase Deficiency with One Base Pair Deletion of the Cytochrome P450c17 (CYP17) Gene. J Clin Endocrinol Metab 80 2526-2529.
G95002: Eguchi Y, Ikehara T, Kayo S, Eguchi T, Takei H (1995) Amino Acid Sequence of α-and β-Polypeptide Chains of Turkey (Meleagris gallopavo) Hemoglobin. Biol Chem Hoppe-Seyler 376 437-440.
 2. 総説
S95001: 武居洋, 安里剛 (1995) ヘム-銅酸化酵素スーパーファミリー . 生体の科学 46 490-491.
 4. 報告
H95001: 池原強, 江口幸典, 嘉陽進, 武居洋 (1995) βグロビンアミノ酸配列の比較から見た鰭脚類の系統進化. 生化学 67 724.
H95002: 江口幸典, 池原強, 嘉陽進, 武居洋 (1995) キジ亜科ヘモグロビンの分子進化について. 生化学 67 724.
H95003: 長嶺安司, 高宮城敦, 中嶋安嗣, 野中薫雄 (1995) 骨髄性プロトポルフィリン症患者におけるferrochelatase遺伝子の解析. 日皮会誌 105 427.
H95004: 高宮城敦, 安里剛, ブットー・アブダル・マナン, 上里博, 野中薫雄 (1995) 人乳頭腫ウイルスの誘発が考えられた悪性黒色腫. 西日皮膚 57 657.
H95005: 豊見山直樹, 山城勝美, 石田昭彦, 六川二郎, 中嶋安嗣, 武居洋 (1995) 一過性脳虚血後のラット海馬における細胞周期関連物質の発現. 日本脳卒中学会総会第20回 横浜 3 192.
H95006: 豊見山直樹, 六川二郎, 山城勝美, 石田昭彦, 中嶋安嗣, 武居洋 (1995) 一過性脳虚血後のラット海馬におけるG1 cyclinsの発現. 日本神経外傷研究会第18回 大宮 4 115.