環境保健学教室


A.研究課題の概要

 1. インドネシア, スラヴェシ島における人体寄生虫に関するアンケート調査と糞便検査
 1994年スラヴェシ島の北東100kmのバル部落で, ハサヌディン大学と共同で人体寄生虫の疫学的調査研究の一環として住民400人を対象に生活環境に関するアンケート調査と糞便検査を行った。 結果はコンピュータによって集計分析中である。
 2. インドネシアの蚊の調査とくに媒介蚊の発生
 1991〜94年文部省国際学術研究助成及び日本学術振興会大型共同研究によりインドネシアのスラヴェシ島, ロンボック島およびスマトラ島で蚊の生息状況や蚊相の特徴を調べると共にマラリア伝搬蚊について調査を行った。 その結果, クロヤブカ属とギンモンカ属の蚊の新種を発見, Armigeres arkatriiとTopomyia javaensisと命名し, 米国の専門誌 (Mosquito Systematics) に発表した。 又スラベシ島のバル部落で保健所と共同で, デング熱患者人家内外に発生する媒介蚊, ネッタイシマカとヒトスジシマカの発生源と年間を通じての発生消長をオビトラップを使って調査中である。
 3. フィリピン, タイ, マレーシアの蚊科に関する研究
 1981〜85年にかけて文部省国際学術研究助成により3国で蚊の調査を行い, 多くの標本を教室へ持ち帰っており, それらの蚊の検索を現在行っている。
 4. 沖縄県宮古, 八重山地方におけるマラリア伝搬蚊An. minimusの生態及び分布状況
 地球温暖化に伴いマラリア伝搬蚊の分布拡大が予測される。環境庁の依頼で, 現在のマラリア伝搬蚊の分布状況を把握するために宮古島, 石垣島, 西表島で分布, 発生, 生態調査を実施した。結果は日本衛生動物学雑誌に投稿中である。
 5. Anopheles saperoi groupに属する2亜種の分類学的検討
 1946年, 沖縄本島から新種として発見されたAn. saperoiと翌年, 石垣島から新種として記載されたAn. ohamaiは形態学的によく似ており, An. ohamaiの独立性が疑われている。 両種の関係を明らかにするため種々の方法で究明する。 今年は特に年間を通じて両種成虫の翅の白斑の変異を調べるため, 標本を集めた。
 6. ダニと気管支喘息
 気管支喘息の吸入抗原として家庭内塵中のダニが注目されているが, 沖縄県でのダニの種類, それらの生息状況や気管支喘息患児の発作の関係についてはこれまで全く不明であった。 当教室による5年間の調査で, 沖縄県内の家庭内塵中のダニ相は本土とは明らかに異なり, 気管支喘息の主抗原として重要視されているヤケヒョウヒダニが最優占種で, コナヒョウヒダニがほとんど生息していないことが明らかになった。 気管支喘息発作は床塵中のダニ数より患児が使用している布団塵中のダニ数と関係していることも明らかになった。 又幼児のアレルギーの実態を知るため, 宜野湾市, 沖縄市の3歳児検診でアレルギー罹患率等についてアンケート調査を実施し, 結果をまとめて公表した。また個人が使用している種々の寝具中のダニ数についても調査した。 さらに, 吸収式の掃除機による布団のダニ除去の有効性についても検討した。 結果の一部はすでに日本衛生動物学会誌に公表されている。
B.研究業績
 1. 原著
G95136: Mangali A, Toma T, Miyagi I et al (1994) Prevalence of intestinal helminthic infections in Kao district, north Halmahera, Indonesia. Southeast Asian J Trop Med Public Health 25 737-744.
G95137: Mogi M, Memah V, Miyagi I, Toma T, Sembel D T (1995) Mosquito (Diptera: Culicidae) and predator abundance irrigated and rain-fed rice fields in north Sulawesi, Indonesia. J Med Entomol 32 361-367.
G95138: Takeda F, Toma T, Miyagi I, Kishimoto M (1995) Comparison of isolation rates of tarsonemid mites in house dust between two mesh-size sieves. Jpn J Sanit Zool 46 145-149.
G95139: Toma T, Miyagi I, Syafruddin (1995) Description of Armigeres (Armigeres) alkatirii, a new species from Sulawesi, Indonesia (Diptera: Culicidae). Mosq Syst 27 110-117.
G95140: Dong X, Miyagi I (1995) A new species description of subgenus Suaymyia of genus Topomyia. Zool Res 16 343-347.
 4. 報告
H95141: 長谷川英男, 宮城一郎 (1995) 熱帯における水と健康 -インドネシアの寄生虫調査から-. 熱帯 28 118-129.
H95142: Syafruddin, 長谷川英男, 宮城一郎, 上村清 (1995) インドネシアにおけるマラリアの疫学的調査. 寄生虫学雑誌 44 71-72.
H95143: 高木正洋, 津田良夫, 宮城一郎, 當間孝子, 杉山章, 和田義人 (1995) 石垣島におけるコガタハマダラカの発生源からの分散 (記号放逐法による吟味). 衛生動物 46 217.
H95144: 茂木幹義, 宮城一郎, 當間孝子, Memah V, Sembel D T (1995) 天水田と潅漑水田における蚊の発生状況比較: 北スラウエシの例. 衛生動物 46 217.