放射線医学講座


A.研究課題の概要

核医学部門
 1. 局所脳血流測定 (堀川歩, 勝山直文, 山口慶一郎)
(1)核医学における局所脳血流測定法はI-123 IMPを用いた方法は既に確立されており, 我々も痴呆症例を対象に行ってきた。 しかし, 手技が煩雑であるためルーチン化されないのが現状である。 最近, パトラックブロット法を用いたTc-99m ECDによる簡便な方法にて局所脳血流を測定している。堀川は従来のI-123 IMPによる方法とこのパトラックブロット法の比較を行い, 本法の限界と臨床的意義を研究中である。 (堀川歩, 勝山直文)
(2)現在, 精神科との共同研究で, アルツハイマー型痴呆および脳血管性痴呆を対象Tc-99m ECDを用いた局所脳血流測定を行い, その臨床的意義について研究中である。 (堀川歩, 勝山直文, 精神科外間)
(3)記憶障害のみを有し, 痴呆がない症例を対象に局所脳血流測定を行い, 個々の症例での記憶障害の種類, 程度と局所脳血流の異常について研究中である。 (堀川歩, 勝山直文)
 2. 脳腫瘍の悪性度の評価と再発の早期発見 (堀川歩, 勝山直文, 柴田冬樹)
 脳腫瘍の悪性度の評価はF-18 FDGを用いた報告はあるが, SPECTによる報告は少ない。 Tl-201とTc-99m MIBIを用いて悪性度の評価および再発と放射線壊死との鑑別が可能かを検討中である。
 3. 悪性腫瘍における化学療法前の治療効果の予測
  (勝山直文, 堀川歩, 戸板孝文, 小川和彦)
 悪性リンパ腫, 甲状腺癌, 頭頸部癌および脳腫瘍を対象にTc-99m MIBIの腫瘍への集積程度を検討してきた。特にSPECTによりその感度は明らかに改善した。 動物実験では抗癌剤が腫瘍に集積しない例ではTc-99m MIBIも集積しないことが報告されている。 現在, 抗癌剤の投与前に治療効果の判定が可能かを検討中である。
 4. Tc-99m MIBIによる副甲状腺シンチグラフィ (勝山直文, 堀川歩)
 副甲状腺の腺腫または過形成の診断にTl-201とTc-99mによるサブトラクション法が用いられている。しかし, その検出感度は満足出来るほどではない。 Tc-99m MIBIは甲状腺より早期に洗い出されるが, 副甲状腺腺腫や過形成では洗い出しが遅い。現在, 従来の方法とTc-99m MIBIによる方法を同一症例に行い, その有用性を検討中である。
 5. 骨盤内腫瘍術後における深部静脈血栓症と肺塞栓の早期診断と治療効果判定
  (勝山直文, 堀川歩, 産婦人科)
 最近, 骨盤内腫瘍術後に深部静脈血栓症を合併する症例が増加している。 その早期診断のためTc-99m MAAを用いたRI Venographyが行われている。本法と超音波ドプラー検査の両者による静脈内血栓の有無, 側副血行路の発達についてどちらが診断能が高いかを検討中である。さらに, 深部静脈血栓の治療効果判定および肺塞栓の有無についても検討している。
 6. 精神分裂病治療薬による骨塩量減少の影響 (勝山直文, 精神科高橋)
 本邦に於いて, 初めて体幹部 (腰椎, 大腿骨頚部など) の骨塩量測定装置が1989年に琉大附属病院に設置されてから, 沖縄県在住者の正常骨塩量, 青年期における運動による骨塩量に及ぼす影響, 抗てんかん薬による骨塩量減少, 骨塩量測定装置の再現性などについて, 報告してきた。現在, 精神分裂病患者の骨塩定量を行い, 抗精神薬の骨塩量への影響を研究中である。
 7. 甲状腺癌転移症例の予後関する研究 (勝山直文)
 分化型甲状腺癌の予後は他の悪性腫瘍に比べ極めて良好である。しかし, 既に転移を来している症例では非転移例に比し予後は不良である。I-131治療を目的に当科を受診した症例を対象に, 血中サイログロブリン値と治療経過中のその変動, また年令, 性, 腫瘍の組織型, 転移部位などの因子を解析し, 予後の推定を研究中である。
 8. 正常, 脳血管障害, 変性疾患におけるI-123 IMPを用いた脳血流画像における
  distribution volume値の検討 (堀川, 勝山, 山口)
 I-123 IMPを用いた脳血流画像におけるdistribution volume値は症例間の差異はなく, ほぼ一定だとされている。しかしながら, 脳血管障害, 変性疾患においての検討は未だ不十分である。我々は実際に局所脳血流を測定した症例にてdistribution volume値を算出し正常例との違いを検討している。
 9. 脳血流画像における吸収補正法と比較と問題点 (堀川, 勝山, 垣花, 山口)
 脳血流SPECT画像を作製するうえで重要な処理である各種の吸収補正法を比較し, その問題点, 最適の方法について検討する。

診断部門
 1. 三次元画像の研究 (山口慶一郎, 新里仁哲, 鷺野谷利幸)
 MR, CT,RIのdataを3次元的に構築しそれぞれの特性を合わせた画像の作製を行っている。現在主にMR画像を中心にMR angiography, MR cholangiography, MR urographyを三次元画像として構築し, 各種学会で発表している。特に旭情報開発と共同開発した連続法アルゴリズムを用いた三次元画像構築は, 従来の三次元画像構築のアルゴリズムに新しいアルゴリズムを追加したもので, 従来の三次元画像に比較して正診率が向上することもあわせて, 発表した。 今後従来から進めているfunctional MRIによる機能画像との重ね合わせ, および各症例と日本人標準脳との立体的な変換プログラムの作成による統計画像処理をあわせて進めていく予定である。
 2. CT fruoroscopyの研究 (山口慶一郎, 新里仁哲, 垣花泰政)
 CTの画像を秒間6枚と高速に描出する技術が開発導入された。この機能を用いて, 主に第1内科と肺の生検を中心とした研究を行っている。 今後この技術が普及するためには正確な被曝量を知ることが必要だと考えられ, 現在臨床例およびファントム実験で患者および術者の被曝量を測定している。現在までの結果からは, 予想された手指被曝の他, 眼球被曝が問題になりそうであることが明らかになった。現在被曝を避けるための技術開発をあわせて進めている。

治療部門
 1. 頭頸部癌に対する放射線治療を中心とした集学的治療
   (戸板孝文, 小川和彦, 垣花泰政, 耳鼻科, 口腔外科)
   関係各科と週1回の腫瘍カンファレンスを持ち, 臨床研究を進めている。
  (1)少量CDDP同時併用放射線治療の研究
 1993年11月より開始されたrandomized clinical trial (全国9施設) は, 1995年11月にcloseされた。現在, 結果を解析中である。
  (2)1日多分割照射 (hyperfractionation)
 上咽頭癌, 喉頭癌を中心に症例を集積中である。
(3)上咽頭癌に対するadjuvant chemotherapy CDDP+5FUの投与を, 遠隔転移high-risk群に対し行なっている。 一次効果, 急性毒性について解析中である。
  (4)術中照射
 通常の術後照射と同等の制御率と, 高頻度の重篤な晩期障害が明かとなり, 臨床試験は中止された。 以上の結果は1994年に国際学会誌に掲載され, その内容は, YEAR BOOK ONCOLOGY (Mosby-Year Book, Inc.) 1995に紹介された。
  (5)各種画像所見の予後因子としての意義
 根治的放射線治療の適応を更に明確にする目的で, Helical CT, MRI等の画像所見と, 放射線治療による局所制御率との関連についての検討を開始した。 現在, T2-3喉頭癌, 上咽頭癌について, prospectiveに症例を集積中である。下咽頭癌についてのretrospective studyの結果(CT)は, 国際誌に掲載された。
 2. 子宮頸癌の個別化治療に関する研究 (戸板孝文, 垣花泰政, 小川和彦, 産婦人科)
   産婦人科と週1回の腫瘍カンファレンスを持ち, 臨床研究を進めている。
  (1) FIGO病期以外の予後因子の検討
 根治的放射線治療施行例について, CT所見を検討した結果, 子宮頸部径は予後因子とならなかったが, 骨盤内リンパ節腫大の有無は有意な予後因子であった。以上の結果は, 国際誌に掲載された。現在, MRI所見の予後因子としての意義を検討中である。
  (2) Ir-192高線量率腔内照射 (RALS) の基礎・臨床研究
 文部省班研究に班員として参加し, 特に物理的特性の研究成果をまとめ, 報告した。その結果をもとに, 腫瘍形態に応じ個別化された, 高精度治療を開始した。
 3. 悪性リンパ腫の集学的治療
   (戸板孝文, 小川和彦, 耳鼻科, 口腔外科, 臨床生理学教室 / 荒木弘一)
 ATLを含めた悪性リンパ腫について, 基礎・臨床研究を進めている。Waldeyer輪を中心とした頭頸部領域の非ホジキンリンパ腫 (中高度悪性群) に対し, 徹底したStagingを行なった後, CHOP 3コース+Involved field radiation therapy (30-40Gy)のプロトコールにて治療を行なっている。
 4. 脳腫瘍の放射線治療 (小川和彦, 戸板孝文, 垣花泰政, 山口慶一郎, 中野政雄, 脳外科)
 悪性グリオーマに対する放射線治療においては, 外部照射による多分割照射, 術中照射, Ir-192高線量率密封小線源治療の臨床研究を行っている。また胚芽腫, 髄芽腫等においては, 放射線治療による効果, 合併症等の結果を分析し, より的確な治療方針の確立を目指している。
B.研究業績
 1. 原著
G95001: Sueyama H et al (1995) Intra-arterial Chemotherapy with Cisplantin Followed by Radical Radiotherapy for Locally Advanced Cervical Cancer. Gynecologic Oncology 59 327-332
G95002: 山口慶一郎, 中野政雄 (1995) 肥満症 -MRIを用いた脂肪測定-. 日臨53 215-219.
G95003: Toita T, Nakano M, Higashi M, Sakumoto K, Kanazawa K (1995) Prognostic value of cervical size and pelvic lymph node status assessed by computed tomography for patients with uterine cervical cancer treated by radical radiation therapy. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 33 843-849.
G95004: 小川和彦, 戸板孝文, 末山博男, 滝澤義和, 垣花泰政, 久志亮, 原竜介, 古謝静男, 中野政雄 (1995) 早期声門部喉頭癌の放射線治療. 日癌治療会誌 30 764-770.
G95005: 小川和彦, 戸板孝文, 垣花泰政, 末山博男, 古謝静男, 真栄城徳秀, 砂川元, 新崎章, 中野政雄 (1995) 舌癌の組織内照射 -頸部制御を中心に-. 日癌治療会誌 30 1859-1867.
G95006: Kushi A, Kakihana Y, Yamaguchi K, Sueyama H, Toita T, Ogawa K, Hara R, Nakano M (1995) INTERSTITIAL RADIOTHERAPY FOR BRAIN TUMORS USING THREE-DIMENSIONAL MRI. 日放線腫瘍会誌 7 229-233.
G95007: 久志亮, 末山博男, 戸板孝文, 小川和彦, 垣花泰政, 中野政雄, 宮城航一, 六川二郎 (1995) 悪性グリオーマの放射線治療. 臨放線 40 587-591.
 2. 総説
S95001: 勝山直文 (1995) 特集 CT,MRI時代の核医学 骨シンチ -骨シンチグラフィは生き残れるか-. 画像診断 15 776-786.
 4. 報告
H95001: 勝山直文, 堀川歩, 柴田冬樹, 新里早奈枝, 高良誠, 奥間裕次, 赤嶺珠, 中野政雄 (1995) 負荷によるTc-99m MIBI心筋血流変化一心 / 縦隔比は血流量増加の指標として臨床使用が可能か. 核医学 32 826.
H95002: 勝山直文, 堀川歩, 柴田冬樹, 大兼剛, 與儀正, 大田豊 (1995) 負荷によるTc-99m MIBI心筋摂取と心筋血流変化. 核医学 32 826.
H95003: 諸見里秀和, 大兼剛, 新里早奈枝, 堀川歩, 柴田冬樹, 山口慶一郎, 勝山直文, 中野政雄 (1995) ミューラー管混合腫瘍の特徴と画像所見. 日医放線会誌 55 838
H95004: 戸板孝文, 小川和彦, 垣花泰政, 古謝静男, 真栄城徳秀, 中野政雄 (1995) 下咽頭癌の放射線治療:原発巣制御に関する予後因子の検討. 日癌治療会誌 30 S1169.
H95005: 戸板孝文, 小川和彦, 垣花泰政, 中野政雄 (1995) 局所進行子宮頸癌に対する導入動注化学療法の意義. 日放線腫瘍会誌 7 S155.
H95006: Horikawa A, Katsuyama N, Yamaguchi K, Yamazaki H, Kuniyoshi K, Meguro K (1995) Regional cerbral blood flow measurement using I-123 IMP and brain atrophy assessment of dementia of Alzheimer type and vascular dementia. Proceedings the first China-Japan nuclear medicine conference 32
H95007: 堀川歩, 勝山直文, 山口慶一郎, 大田豊, 與儀正, 鷺野谷利幸, 又吉隆, 中野政雄 (1995) 記憶障害をもつ種々の疾患における脳血流SPECTの検討. 核医学 32 854
H95008: 鷺野谷利幸, 諸見里秀和, 山口慶一郎, 中野政雄, 島袋善盛, 嘉川春生 (1995) 極めて稀なPersistent M ullerian Duct Syndromeの1例. 日医放線会誌 55 1010.
H95009: 鷺野谷利幸 他10名 (1995) 3次元MR画像を用いた半月板損傷の診断. 沖縄医会誌 34 44.
H95010: 鷺野谷利幸, 山口慶一郎, 矢作雅章, 谷英林, 中野政雄 (1995) 連続性認識アルゴリズムを用いた3次元MR画像の描出能改善の試み -MR Angiography, MR CholangiographyおよびMR Urographyによる比較検討-. 日磁気共鳴医会誌 15 S 287.
H95011: 鷺野谷利幸, 他10名 (1995) 3次元再構成MR画像を用いた前十字靭帯断裂の診断. 沖縄医会誌 34 54.
S95012: 小川和彦, 戸板孝文, 垣花泰政, 久志亮, 中野政雄 (1995) 舌癌の組織内照射 -頸部制御を中心に-. 日癌治療会誌 30 1524.
 5. その他
M95001: 最上拓児, 森豊, 川上憲司, 勝山直文 (1995) 心筋および肝実質に著明な石灰化を来した慢性腎不全の1例. 臨床核医学 28 66-68.