保健生物学教室


A.研究課題の概要

 1. 腸管内細菌による胆汁酸変換
 胆汁酸は食物中の脂質の吸収に重要な役割を演ずるのみならず, それ自身も吸収されて胆肝循環を行っている。一方, 腸管内に入った胆汁酸は腸管内細菌による代謝変換を受ける。 胆汁酸の細菌代謝産物デオキシコール酸とリトコール酸に大腸癌の発癌促進作用 (プロモーター作用) があることが知られ, またcocarcinogen作用も有することが顕かにされている。 われわれはこれまで腸管内容物より7α-および7β脱水酸化反応を起こすEubacterium spp.およびClostridium spp.の菌株を単離し, 報告した。 また, これらの菌株はBacteroides spp.の菌株と混合培養を行うと脱水酸化反応が促進されることを認めた。 しかし, まだ腸管内細菌による胆汁酸の変換については, 変換菌の単離, 変換反応の機構, 変換産物の生理活性などまだ残された問題が多く, 今後それを解明していく。
 2. 沖縄県における黄色ブドウ球菌の生態
 黄色ブドウ球菌は健康人にも常在菌として存在するが, 日和見感染を起こし, 多彩な病像を示す。 最近, 世界的にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) による病院内感染が増加している。 しかも, この菌は多剤耐性菌が多いことから治療上問題となっている。それ故にMRSAの発生と伝播の解明に資するため, 沖縄県内の主要病院の入院, 外来患者由来および正常人由来の黄色ブドウ球菌について薬剤感受性とファージ型別およびコアグラーゼ型別を行い, MRSAとメチシリン感受性黄色ブドウ球菌 (MSSA) とに分け, ここ数年にわたり比較検討を行ってきた。 その結果, MRSAはファージ7, 型別不能群および混合群が多いのに対し, MSSAは7欧多いが各群にまたがって分布していた。また型別不能群が増加しつつあることが明らかになった。 コアグラーゼ型別においては群, 7欧多かった。
 健康人由来の黄色ブドウ球菌はまだ検査件数は少ないが概ねベンジルペニシリン以外の薬剤に感受性であり, ファージ型別を見ると7欧最も多く, 全ての群が検出される。さらに詳しくファージパターンを調べると, 各個人由来の菌型の経時的変化, 集団の特性 (例えば年齢, 地域など) による菌型の差異などについて追跡検討したい。また, 本菌の型別方法も比較検討したい。
B.研究業績
 1. 原著
G9501: Takamine F, Imamura T (1995) Isolation and characterization of bile acid 7-dehydroxylating bacteria from human feces. Microbiol Immunol 39 11-18.
G9502: Lotsu K D, Imamura T, Takamine F (1995) Current Status of Antimicrobial Susceptibility in MRSA Isolates Typed by Coagulase and Phage Typing in Okinawa. Acta Med Okayama 49 81-89.
 4. 報告
H9501: 高嶺房枝, 仲村裕子, 今村禎祐 (1995) レシチナーゼ陰性, グラム陽性嫌気性有芽胞桿菌,Clostridium spp. による胆汁酸代謝. 日細菌誌 50 226.
H9502: 嘉数雅亮, 高嶺房枝, 今村禎祐 (1995) 標準ファージ型別不能MRSAの新分離ファージによる型別. 日細菌誌 50 264.
H9503: Lotsu K D, 高嶺房枝, 今村禎祐(1995) Prevalence and characteristics of MRSA in Okinawa. 日細菌誌 50 264.
H9504: 嘉数雅亮, Lotsu K D, 仲村裕子, 湧田博子, 仲松郁子, 高嶺房枝, 今村禎祐 (1995) 標準ファージ型別不能黄色ブドウ球菌の新分離ファージによる型別の試み. 沖縄感染症研究会抄録集 11.