外科学第二講座


A.研究課題の概要

 1. ACバイパスグラフトの拍動性流速分布特性の解明に関する研究 (宮城和史)
 冠動脈バイパス術時に用いられる動脈グラフト (両側内胸動脈, 右胃大網動脈, 下腹壁動脈) の組織学的構造の検討を行い, 患者背景因子 (年令, 性別, 糖尿病, 高脂血症の有無など) による構造の変化を解析する。患者背景因子のこれら動脈グラフト に与える影響は, 各動脈間で異なっている事が予想され, 動脈グラフト の使用上の適応を明らかにする。 研究続行中。
 2. 動脈血行再建術後の晩期閉塞の病態と制御機序の解明に関する実験的研究
  1)吻合部肥厚内膜におけるvasa vasorumの新生に関する研究 (大田治)
 吻合部肥厚内膜には多数のvasa vasorumが認められるが, この新生過程をMicrofil注入法により実体顕微鏡にて観察した。 移植後5-7日, 血管吻合糸に沿う血管壁組織裂隙を介してMicrofilの流入が見られ, 内皮細胞が侵入・配列し細血管を形成すると考えられた。 移植後2週間, 吻合線に沿って内腔に開口し樹枝状に分布しながら外膜側vasa vasorumと連結する細血管が多数認められた。 移植後6ヶ月以降, 吻合部パンヌスの肥厚が300ミクロン以上になり, 内腔由来のvasa vasorumがバンヌス組織内に網状に分布する所見が得られた。 研究続行中。
  2)移植静脈片ならびに吻合部肥厚内膜におけるコラーゲン分布 (鎌田義彦, 玉木正人)
 異常血流環境下に置かれた末梢動脈の自家静脈移植片ならびに吻合部の仮性内膜肥厚部の細胞外マトリックス (ECM) の分布を免疫組織化学的に検討し, 異常血流下では3ヶ月以降に吻合部仮性内膜は厚く発達し, I, , しコラーゲン及びファイブロネクチンは正常血流環境下での吻合部の様な内皮細胞下の濃染領域を形成しないことを観察した。壁面剪断力の低い内膜肥厚部ではECMがシグナルとなって, 平滑筋細胞の増殖や器質合成に異常を来して内膜が肥厚する機序が示唆された。 現在, 免疫学的所見の定量化を試みている。 研究続行中。
  4)壁面剪断力を調整した血管内皮細胞培養系における内皮細胞直下のコラーゲンの分布
   (鎌田義彦, 砂川一哉)
 ステッピングモニターならびにパルスモーターコントロール装置を用いて角速度を自由に制御できる回転円盤装置を作成し, この上に犬血管内皮細胞を飽和状態にまで培養したガラスシャーレを載せ, 種々の壁面剪断力をシミュレートする回転を加えて培養を続け, 内皮細胞下に産生される細胞外マトリックス物質の産生状況ならびに分布を検索している。 I型コラーゲンでは剪断力の差による内皮細胞のコラーゲン産生には差は認められていないが, III型コラーゲンは剪断力の大きい所で, IV型コラーゲンでは小さい所でより多くのコラーゲンが産生されている。研究続行中。
  5)平滑筋細胞, 内皮細胞の増殖因子ならびに制御因子の解明 (佐久田斉, 松原忍)
 犬血管平滑筋細胞および内皮細胞を培養し, その細胞増殖を促進および制御する因子を解明すると共に, これをコントロールしうる薬剤 (ステロイド・プロスタグランジンなど) を検索する。 研究続行中。
  6)吸収性血管縫合糸の血管吻合部内膜肥厚に及ぼす影響 (玉城守)
 動脈再建における血管吻合部では, 縫合糸周囲の組織間隙を介して線維芽細胞様細胞が浸潤し, また内腔由来vasa vasorumが形成されて吻合部内膜の著しい肥厚が起こり晩期閉塞の源となる。 吸収性縫合糸を用いて血管吻合を行った場合, 縫合糸が吸収され,縫合糸周囲の組織間隙が移植後早期に消失するため線維芽細胞様細胞の浸潤がなくなり, 内膜肥厚が形成されにくいと考えられる。 吸収性縫合糸周囲の細胞浸潤はきわめて少なく, 組織反応が小さいと考えられた。 縫合糸は移植後3カ月目には完全に消失し, 吻合部内膜肥厚は, 非吸収性縫合糸を用いた吻合部に比して軽微である所見が得られた。研究続行中。
 3. 体外循環下での諸臓器の血行動態および病態の解明と制御に関する実験的研究
  1)上下2方向分離送血法における血行動態に関する研究 (古謝景春, 下地光好)
 弓部大動脈瘤の手術時, 超低体温循環停止, 脳分離体外循環や逆行性脳潅流婦などが脳保護目的で行われている。 更に現在では順行性送血の観点から上下2方向分離送血法の臨床研究も散見され, その重要性が問われるようになった。 しかしながら2方向送血時の血行動態は未だ明らかでない。 そこで同手段を用いた際の血行動態が冷却加温過程で如何に変動するかについて検討し究明する。 研究続行中。
  2)胸部大動脈手術時の腎動脈血流量に関する実験的研究 (赤崎満)
 胸部大動脈領域の手術においては大動脈遮断末梢側の臓器保護が重要であり, その際の補助手段として部分体外循環法が多用されている。 本法を用いた動物実験モデルを作成し, 腎保護の観点より, 大動脈遮断中の腎動脈血流量とバイパス流量, 遮断末梢側血圧及び血管抵抗との関係について調べ, 至適潅流条件の検討を行う。 研究続行中。
  3)胸腹部大動脈瘤手術における腎血流遮断時の選択的腎灌流の
   至適条件に関する研究 (古謝景春, 久高学)
 胸腹部大動脈瘤手術は主要分枝動脈遮断による主要臓器 (肝臓, 腎臓) の虚血により術後重篤な臓器障害を合併することがあり, いまだ満足すべき結果を得ていない。 分枝動脈遮断時の選択的臓器灌流は臨床自験例よりみて肝臓, 腎臓の虚血予防策としては有用であるが, その際の灌流量, 灌流圧を含めた至適灌流条件に関してはいまだ明確ではない。腎動脈の遮断による腎臓の虚血性変化を論じた報告は多く, 歴史的に見ても腎移植領域では摘出した腎の温存法に関して様々な検討がなされているが, そのほとんどは単純温阻血や摘出腎に関するものであり選択的臓器灌流法を用いての実験報告はない。 我々は, 臨床自験例において人工心ポンプによる選択的臓器灌流を行いその有用性について述べてきたが, 今回その有用性を実験的に証明し, かつその至適灌流量を明らかにしたい。 腎臓のviability判定には現在最も信頼性の高い判定法として組織エナルギー代謝を指標とし, 琉球大学医学部薬理学教室の協力得てATP, CP, 乳酸, 無機リン酸を計測する。研究続行中。
B.研究業績
 1. 原著
G95001: Kinjo O, Kusaba A (1995) Lymphatic vessel-to-isolated-vein anastomosis for secondary lymphedema in a canine model. Surg Today 25 633-639.
G95002: Kugai T, Koja K, Kusaba A (1995) An in vitro evaluation of venous cannula in a simulated partial (femoro-femoral) cardiopulmonary bypass circuit. Artif Organs 19 1-7.
G95003: Kugai T, Koja K, Kuniyoshi Y, Akasaki M, Miyagi K, Simoji M, Kusaba A, Misaki T (1995) One stage repair of concomitant Wolff-Parkinson-White syndrome and ventricular septal defect: A case report. Ryukyu Med J 15 41-43.
G95004: Sunagawa K, Sirirungsi W, Nakazato I, Hirayasu T, Iwamasa T (1995) Pathologic studies and comparison of the virulence of herpes simplex virus type 2 from Okinawa, Japan and Chiang Mai, Thailand. Int J Exp Path 76 255-262.
G95005: Sirirungsi W, Sunagawa K, Iwamasa T (1995) Restriction endonuclease cleavage analysis of Herpes simplex virus type 2 from Chiang Mai, Thailand and Okinawa, Japan. Trop Med Parasitol 46 1-5.
G95006: 草場昭 (1995) 閉塞性動脈硬化症 最近の進歩 閉塞性動脈硬化症の診断と治療. Med Digest 44 2-6.
G95007: 古謝景春 (1995) 胸腹部大動脈瘤の手術. オペナーシングOPE nursing 10 643-648.
G95008: 古謝景春, 国吉幸男, 伊波潔, 赤崎満, 宮城和史, 下地光好, 久貝忠男, 久高学, 島袋正勝, 草場昭, 神里隆 (1995) 弓部大動脈瘤手術時の上下2方向分離送血法における血行動態に関する研究. 人工臓器 24 521-524.
G95009: 国吉幸男, 古謝景春, 赤崎満, 宮城和史, 下地光好, 久高学, 草場昭, 島袋正勝, 神里隆 (1995) F-Fバイパスによる開心術手術症例の検討. 人工臓器 24 882-885.
G95010: 大嶺靖, 佐久田斉, 古謝景春, 草場昭 (1995) 下肢動脈血行再建術における成否予測の術前指標の解析. 日血管外会誌 4 549-558.
G95011: 玉木正人, 佐久田斉, 久田友治, 砂川一哉, 玉城守, 松原忍, 鎌田義彦, 古謝景春, 草場昭 (1995) 下肢閉塞性動脈硬化症に対する治療法の評価とQOL. 日血管外会誌4 83-90.
G95012: 久貝忠男, 古謝景春, 国吉幸男, 赤崎満, 宮城和史, 下地光好, 草場昭 (1995) 動脈硬化性病症と冠動脈病変の合併例に対する一期的手術症例の検討. 日血管外会誌4 499-506.
G95013: 玉木正人, 佐久田斉, 鎌田義彦, 久田友治, 砂川一哉, 玉城守, 松原忍, 古謝景春, 草場昭 (1995) 1次性下肢深部静脈弁不全に対する弁輪, 弁洞縫縮術. 日血管外会誌4 507-513
G95014: 宮城和史, 古謝景春, 国吉幸男, 伊波潔, 赤崎満, 下地光好, 久貝忠男, 鎌田義彦, 城間寛, 草場昭 (1995) 心タンポナーデをきたした冠動静脈瘻破裂の一治験例. 日血管外会誌24 64-67.
G95015: 下地光好, 古謝景春, 国吉幸男, 赤崎満, 宮城和史, 草場昭 (1995) 心筋梗塞, 三枝病変を合併した多発性大動脈瘤に対する二期的拡大再建術の1例. 日胸外会誌 43 1752-1756.
G95016: 久田友治, 友田博次, 原信之, 一瀬幸人, 古澤元之助, 大田満夫 (1995) 大腸癌の原発巣と肺転移巣の核DNA量の解析. 日外会誌 96 31-35.
G95017: 佐久田斉, 川畑勉, 城間寛, 仲本敦, 松原忍, 玉城守, 砂川一哉, 玉木正人, 久田友治, 鎌田義彦, 岩政輝男, 草場昭 (1995) α-Fetoprotein産生肺腺扁平上皮癌の一手術例. 日呼外会誌 9 532-537.
G95018: 佐久田斉, 玉木正人, 鎌田義彦, 久田友治, 大田治, 砂川一哉, 玉城守, 松原忍, 古謝景春, 草場昭, 岩政輝男 (1995) 肝動脈再建を伴う拡大根治術を施行した膵原発腺扁平上皮癌の1例. 胆と膵 16 1073-1078.
G95019: 玉木正人, 佐久田斉, 鎌田義彦, 久田友治, 砂川一哉, 玉城守, 松原忍, 古謝景春, 草場昭 (1995) 深部静脈弁不全に対する内視鏡観察下の弁輪, 弁洞縫縮術の工夫. 脈管学 6 87-92.
G95020: 佐久田斉, 玉木正人, 鎌田義彦, 古謝景春, 草場昭 (1995) ベラプロストナトリウムの末梢循環改善作用とワーファリン併用の影響に関する検討. 脈管学別刷 35 231-237.
G95021: 佐久田斉, 松原忍, 玉城守, 砂川一哉, 玉木正人, 久田友治, 鎌田義彦, 古謝景春, 草場昭 (1995) 慢性動脈閉塞性疾患に対するPGE1点滴静注の効果. 臨と研 72 1777-1782
G95022: 玉木正人, 古謝景春, 草場昭 (1995) 内視鏡を利用した静脈弁形成術 -その1- 内視鏡的観察下の弁輪, 弁洞縫縮術. 血管外科 14 30-33.
G95023: 國仲慎治, 古謝景春, 国吉幸男, 赤崎満, 宮城和史, 下地光好, 久高学, 鎌田義彦, 草場昭 (1995) 右冠動脈, 左冠動脈回旋枝完全閉塞を伴った重症左冠動脈主幹部病変の1手術例. 琉球医会誌 15 33-36.
G95024: 屋嘉比静子, 宮城保浩, 瑞慶覧広喜, 平良玲子, 佐久川廣, 古謝景春 (1995) 沖縄県の献血者におけるHCV保有者の実態と告知基準の再考. 日輸血会誌 41 213-217.
 3. 著書
T95001: 古謝景春 (1995) 腹部大動脈瘤に対するアプローチと手術方法. 最新胸部外科手術1995 日本胸部外科学会, 東京, 254-265pp.
T95002: 古謝景春 (1995) 瘤形態からみた胸腹部大動脈瘤手術症例の検討. 胸部外科領域における手術手技の工夫 日本胸部外科学会関西地方会第22回学術セミナー, 日本胸部外科学会関西地方会, 西宮, 81-87pp
 4. 報告
H95001: 草場昭, 鎌田義彦 (1995) 移植自家静脈片の肥厚内膜におけるコラーゲン分布の特性. 1994年度厚生省特定疾患難治性血管炎調査研究班報告書 166-170.
H95002: 草場昭 (1995) Buerger病の下肢動脈造影所見の特徴と治療方針. 厚生省特定疾患難治性血管炎調査研究班平成6年度シンポジウム報告書 91-98.